クローン病(指定難病96)
くろーんびょう
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■クローン病の症状について
- 糞便の水分含量が増加し、泥状から水様性の便として排泄されることを下痢といいます。クローン病の下痢の原因は、腸管粘膜の 炎症 により吸収能が低下したり、腸の中へ滲出液が排泄されることにより生じます。夜間にも下痢がみられる場合はクローン病の病勢が悪化していることが多い傾向にあります。しかし、夜間に経腸栄養を行っている場合や抗生物質を服用している場合でも下痢が生じることがあるので注意が必要です。
クローン病でみられる下痢はどのようなものですか
- 体重減少は栄養障害を意味し、食事摂取量の低下、栄養素の消化吸収の低下、下痢、出血、蛋白漏出などによる喪失、また発熱、代謝の 亢進 、潰瘍などの組織修復に消費される必要エネルギーの増加などによって生じます。
クローン病でみられる体重減少はどのようなものですか
- 消化管にみられる合併症として、腸管に穴があく穿孔、腸管の内腔が狭くなる狭窄、腸管と腸管あるいは腸管と皮膚などに孔があく 瘻孔 などが生じることがあります。また、消化管から大量の出血をきたすこともあります。
クローン病でみられる腸管合併症にはどのようなものがあるのですか
- 炎症性腸疾患の小児では成長障害、性成熟障害がみられることがあります。この病態の主な原因は蛋白質、カロリー、ビタミン、ミネラルの欠乏です。また、治療に用いられる副腎皮質ステロイド(ステロイド)は成長ホルモンの分泌を低下させ、成長障害を惹起するため、小児へのステロイド投与は注意が必要です。
クローン病でみられる成長障害とはどのようなものですか
■クローン病の診断について
- 病歴、臨床所見や臨床検査所見から、まずクローン病を疑います。さらにX線・内視鏡検査により病変診断を行い、鑑別すべき疾患を除外して総合的に確定診断が行われます。病変の存在部位、範囲、程度および消化管以外の合併症について把握し、栄養療法、薬物療法、手術など患者の病態に合った適切な治療法を選択します。
クローン病の診断治療はどのように行われるのですか
- 潰瘍性大腸炎、腸結核、 虚血 性大腸炎、腸型ベーチェット病、エルシニア菌などの感染による急性回腸末端炎などが挙げられます。
クローン病と鑑別診断すべき疾患にはどのような疾患がありますか
- 診断確定前では炎症性腸疾患を疑う端緒として炎症の存在や出血による貧血、低栄養状態、合併症の存在を把握します。診断確定後は病気の活動性の評価、治療法の選択や治療効果の判定に用いられます。
クローン病では血液検査はなぜ必要なのですか
- 病状に変化がなくてもある程度定期的な内視鏡検査は必要です。症状や血液検査で経過を追うのが重要なのと同じく、内視鏡検査では病変の状態を的確に把握し、適切な治療内容を決定するためにも重要です。最近は、小腸内視鏡によってこれまで観察できなかった小腸の病変も的確に診断できる時代になっています。
症状がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか
発症当初、潰瘍性大腸炎と診断されていたのが、その後の経過でクローン病と診断されることはあるのですか
- 原則として潰瘍性大腸炎とクローン病は全く異なる疾患と考えられています。しかし、両疾患は一時期だけをみた場合に診断困難な場合があります。最初、潰瘍性大腸炎と診断されたものが実はクローン病であったり、また、その逆のケースもあります。少数ですが、両疾患の中間的な所見を示し、確定診断が困難な場合もあります。
■生活一般について
- 睡眠不足や過労に気をつけて、規則正しい生活が重要です。病気の状態が落ち着いている時は、基本的に運動や生活に特別な制限はありませんが、翌日に疲労を残さないようにしましょう。
普段の生活でどのようなことに気をつけたら良いのでしょうか
- クローン病の治療において食事は大変重要です。クローン病の病気の悪化に動物性脂肪が関係していることが知られているので、特に症状のある時には低脂肪・ 低残渣 の食事が奨められています。魚由来の脂肪、タンパク質の方がおなかにはやさしいことも知られています。小腸に病変があると脂肪の消化吸収は低下するため、脂肪を摂りすぎないよう注意が必要です。腸管病変が狭くなっている場合は繊維成分を多く含む食品は制限して下さい。ただ、脂肪も食物繊維も必要な栄養素ですから、症状が落ち着いているときには適量(症状が悪化しない程度)の摂取は必要です。個々の患者さんで病変部位や消化吸収機能が異なっているため、下痢、腹痛、膨満感などを誘発する食品や量はさまざまです。ですから、患者さん自身が自分にあった食品を見つけ、病態に悪影響をおよぼす食品を避けることが必要です。
クローン病の食生活について
- クローン病の女性患者さんでも健康女性と同様に妊娠が可能です。しかし、欧米の報告では健康女性と比べクローン病の患者さんでは受胎率がやや低いといわれており、病気の活動性が高くなればなるほど、受胎率は低くなるといわれています。逆に言えば、症状がない 寛解 期であれば、それほど気にする必要はないと考えられます。したがって、症状がある活動期での妊娠は避け、計画的に寛解期に妊娠することが理想的です。
クローン病が妊娠(受胎)に与える影響ついて
- クローン病を引き起こす原因となる特定の遺伝子はみつかっていません。2001年に報告されたNOD2遺伝子の変異は、欧米では10-20%のクローン病患者さんにみられるとされていますが、日本人ではこの変異は認められませんでした。クローン病はメンデルの法則にしたがった遺伝病ではありません。しかし、遺伝性疾患でないものの、クローン病患者さんの家族は、そうでない人と比較してクローン病を発病しやすいことが知られています。
遺伝について詳しく教えてください
- 一般に仕事の内容に関しては病気が理由で制限することはありません。ただし、過労や過度のストレスで増悪することもあるため、疲れを残さないように注意した方が良いでしょう。また、栄養療法のことや症状が悪化した時に入院が必要なことなどについての周囲の理解も必要となります。
クローン病と就業について
■病気の経過について
- 長期に渡って寛解(症状がない状態)を維持している患者さんもおられます。しかし、クローン病は 再燃 することが多く、現時点では原因も明らかにされておらず、また完全に治すための治療法も開発されていません。したがって、長期にわたってこの病気とうまく付き合っていくことが最も重要なことでしょう。
クローン病は完治するのですか
- クローン病では狭窄や腸閉塞などの理由で手術が必要となることがあります。その頻度は発症後5年で約36%、10年で約46%と高いことが報告されていました。また、一度手術を行っても、その後の経過の中で同じような症状のために再び手術が必要となる場合もあります。しかし、近年、抗TNF-α抗体などの薬物治療の進歩を含めた総合的な病気のマネージメントの質の向上により、手術率が10年間で26%程度にまで下がってきていることが明らかになってきています。
クローン病は手術を何度もうけることがあるのですか