ダイアモンド・ブラックファン貧血(指定難病284)

だいあもんどぶらっくふぁんひんけつ
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ダイアモンド・ブラックファン貧血」とはどのような病気ですか

ダイアモンド・ブラックファン貧血は、 先天性 の貧血の一つです。骨髄の中で赤血球がうまく造られないために起こります。このため、骨髄中の白血球や血小板のもとになる細胞は正常ですが、赤血球になる細胞だけが著しく減少しています。 末梢血 でも網赤血球と呼ばれる若い赤血球が減少しています。新生児期から顔色不良で発見されることが多く、1歳までに約90%が発症します。約半数に種々の奇形や発育障害がみられます。リボソームの機能不全が主な原因と考えられています。約10〜20%の患者さんには家族歴があります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

発症頻度は、出生人口100万人当たり約5〜7名と推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この疾患の多くは乳児期に発症しますが、1歳以後になってから見つかることもあります。男児にも女児にもほとんど同頻度で発症します。

4. この病気の原因はわかっているのですか

リボソームの機能障害が、貧血を引き起こす中心的なメカニズムであると考えられています。これまで見つかっているダイアモンド・ブラックファン貧血の原因となる遺伝子 変異 は、ほとんど全てリボソームタンパク 遺伝子の変異 です。現在までに、20種類以上のリボソームタンパク(RPS7、RPS10、RPS15A、RPS17、RPS19、RPS20、RPS24、RPS26、RPS27、RPS28、RPS29、RPL5、RPL8、RPL9、RPL11、RPL15、RPL17、RPL18、RPL26、RPL27、RPL31、RPL35、RPL35A)の遺伝子に変異が見つかっています。さらに、リボソーム成熟因子であるTSR2やHEATR3をコードする非リボソームタンパク遺伝子の変異も見つかっています。本邦でも約60%の患者さんにリボソームタンパク遺伝子の変異が見つかっています。その他、稀なX連鎖の遺伝形式を示す家系で、赤血球・巨核球系転写因子GATA1をコードする遺伝子に変異が見つかっています。

5. この病気は遺伝するのですか

リボソームタンパク遺伝子の変異が原因である場合は、常染色体性顕性遺伝(優性遺伝)の遺伝形式をとります。子供は1/2の確率で変異した遺伝子を受け継ぐことになりますが、その場合は男女を問わず発症します。HEATR3の遺伝子変異が原因である場合は、常染色体性潜性遺伝(劣性遺伝)の遺伝形式をとります。子供は1/4の確率で変異した遺伝子を受け継ぐことになりますが、もう一つのHEATR3の遺伝子に変異がなければ発症しません。一方、TSR2およびGATA1の遺伝子変異が原因である場合は、これらの遺伝子がX染色体という性染色体の中にありますので、変異した遺伝子を有する男性が発症しますが、女性は変異した遺伝子を持っていてもほとんどの場合は発症しません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

新生児期から顔色不良で発見されることが多く、1歳までに90%が発症します。貧血の症状としては、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛があります。約50%の患者さんは種々の奇形を合併します。頭部・顔部の異常が最も多く、大頭、小頭、大泉門開大、顔貌異常、小顎、口蓋裂、巨舌、口唇裂などが約20〜30%に認められます。上肢の異常としては母指球の平坦化、母指骨異常などが10〜20%に認められます。腎泌尿器系の奇形や先天性心疾患を約7〜20%に認めます。また、知的障害が認められることがあります。低身長は約40%に見られます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

輸血とステロイド療法が基本です。治療抵抗例では、同種造血細胞移植の適応があります。輸血が長期にわたる例では過剰な鉄を除去する除鉄療法が必要になります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

約80%の患者さんはステロイドに反応しますが、その後、約40%は輸血 依存性 となり、約40%がステロイド依存性となります。約20%が輸血やステロイドから離脱でき、 寛解 となります。輸血依存性の場合、鉄過剰症によって肝機能障害、糖尿病、甲状腺機能低下症、心筋症を合併することがあります。低身長は本疾患自体の症状の一つですが、最終身長はステロイド療法、鉄過剰症や慢性貧血によって影響を受けます。女性では、妊娠中の合併症(子癇前症、流産、早産、死産、子宮内発育遅延、先天奇形)が通常より多く認められます。急性骨髄性白血病や大腸癌などの悪性疾患を合併することがあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

日常生活においては特に注意すべき事項はありませんが、貧血や鉄過剰やその他の合併症の管理については定期的な受診が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

小児慢性特定疾病情報センター
   概要:https://www.shouman.jp/disease/details/09_02_003/
   診断の手引き:https://www.shouman.jp/disease/instructions/09_02_003/
 
特発性造血障害疾患の診療参照ガイド
http://zoketsushogaihan.umin.jp/resources.html

 

情報提供者
研究班名 遺伝性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)