ATR-X症候群(指定難病180)

えーてぃーあーるえっくすしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ATR-X症候群(X連鎖αサラセミア・精神遅滞症候群)」とはどのような病気ですか

男性の患者さんで、特徴的な顔立ち、知的障害(言葉をお話できない)、運動発達の遅れ、αサラセミア(血液検査でわかる異常ですが、症状はありません)、骨格の異常、外性器の異常、消化管の異常(胃食道逆流症、嘔吐、便秘など)、特徴的な姿勢や行動(自分の口に手を入れて嘔吐を誘発、斜め上を見上げ、手のひらを上に向け、顎を突き上げる、あるい は首をしめる仕草を好む 、視線を合わせようとしない)を特徴とします。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本には約100人の患者さんが診断されています。世界には約200家系が診断されています。出生男児58,000-73,000人に1例、日本では毎年10名前後の患者さんが出生されていると推定されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

知的障害を持つ男性患者さんの原因の一つです。

4. この病気の原因はわかっているのですか

X染色体にあるATRX 遺伝子の変異 により発症します。
確定診断のための遺伝学的検査は令和2年4月から保険収載され、かずさ遺伝子検査室に依頼可能です。

5. この病気は遺伝するのですか

男性はX染色体を母親から引き継ぎます。家系内に他に患者さんがいない(孤発例の)場合、患者さんのお母様の3分の2は 変異 したATRX遺伝子を持っている可能性があり、次のお子さんが男性の場合、2分の1の確率で同じ疾患を発症する可能性があります。患者さんのお母様の3分の1は変異したATRX遺伝子を持っておらず、お子様だけで遺伝子の変異が起きた(新生突然変異)と考えられます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

重度の精神運動発達の遅れが主症状です。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

対症療法が中心となります。早期からの継続的な療育が必要です。特に、消化器系の管理に注意が必要です。症状により、経管栄養、胃瘻の造設、胃食道逆流などの手術を検討する必要があるかもしれません。
動物モデルを用いた基礎研究により、5−アミノレブリン酸の認知機能改善作用が報告されています。[Shioda N. Nature Medicine, 2018] 令和5年度に医師主導治験を実施しました。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状が進行する病気ではありません。合併症が無ければ、 生命予後 は悪くないと推定されます。ただし、比較的元気に過ごしていた患者さんが、感染症などをきっかけに急変する症例も経験されます。定期的な検診(心機能や腎機能、一般血液検査)のチェックが望まれます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

主治医の先生とともに、合併症に注意して、発達や発育を定期的に評価することが大切です。特にお腹の症状(嘔吐、便秘、腹部膨満、胃食道逆流など)の管理が重要です。積極的に療育を行うことで、ゆっくりですが、着実に発達が伸びていくことが期待できます。少なくとも1年に一回は定期健診(血液、尿検査を含む)を受けることをお勧めします。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11.  この病気に関する資料・関連リンク

ATR-X症候群ネットワークジャパン
http://kcmc.jp/ATR-X/index.html
Facebook ATR-X症候群ネットワークジャパン
https://www.facebook.com/atrxjapan/
ATR-X症候群研究班
http://atr-x.jp/atrx/about.html
ATR-X症候群患者グループ
https://huenoy.wixsite.com/atrxpatientsgroup
GeneReviews Japan
http://grj.umin.jp/
かずさ遺伝子検査室
https://www.kazusa.or.jp/genetest/index.html
小児慢性特定疾病
https://www.shouman.jp/disease/html/detail/11_09_026.html
プレスリリース 5−アミノレブリン酸の治療法の開発
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2018-05-22
https://www.amed.go.jp/news/release_20180522.html

 

情報提供者
研究班名 遺伝性白質疾患・知的障害をきたす疾患の医療水準の向上と療養に資する研究システムの構築班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)