筋ジストロフィー(指定難病113)
きんじすとろふぃー
- 筋ジストロフィー類縁疾患では、他の指定難病で申請する必要があります。
筋ジストロフィーの類縁疾患で、他の指定難病として指定されているものに、先天性ミオパチー、遠位型ミオパチー、ウルリッヒ病、ベスレムミオパチー、非ジストロフィー性ミオトニー症候群などが有ります。分かりにくいことも多いので、主治医の先生にどの疾患に該当するかおたずね下さい。なお、ウルリッヒ病、ベスレムミオパチーについては、2017年のENMCワークショップにおける新分類では筋ジストロフィーに入っているため、筋ジストロフィーでの申請も可能です。
三好型といわれました。筋ジストロフィーで申請できますか?
指定難病 | 含まれる疾患 |
29.ウルリッヒ病 | ウルリッヒ病 |
30.遠位型ミオパチー | 三好型ミオパチー 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV/GNE myopathy)、 眼咽頭遠位型ミオパチー その他の遠位型ミオパチー Distal anterior compartment myopathy (DACM) Non-dysferlin distal muscular dystrophy Welander distal myopathy Early-onset distal myopathy Distal myopathy with CAV3 mutation Vocal cord and pharyngeal dysfunction with distal myopathy (VCPDM) Distal VCP(valosin containing protein)-mutated myopathy Distal nebulin (NEB) mutated myopathy Tibial muscular dystrophy: TMD 筋原線維ミオパチー(myofibrillar myopathy) など |
31.ベスレムミオパチー | ベスレムミオパチー |
111.先天性ミオパチー | ネマリンミオパチー セントラルコア病、ミニコア病 ミオチュブラーミオパチー、中心核ミオパチー 先天性筋線維タイプ不均等症 など |
114.非ジストロフィー性ミオトニー症候群 | 先天性ミオトニー 先天性パラミオトニー カリウム惹起性ミオトニー(Naチャネルミオトニー) など |
- 遺伝学的診断または筋肉での診断(免疫学的診断、一般病理学的診断)が基本です。
遺伝性筋疾患は臨床症状だけでは疾患を特定できない場合が少なくありません。また、臨床症状で筋ジストロフィーと診断されていた方の中から、ポンペ病や筋炎など治療可能な病気の患者様が発見されることもあります。
指定難病の申請は、正確な診断がなされていることが条件となっています。責任遺伝子・蛋白が明らかな疾患では、遺伝子(遺伝子診断)または蛋白レベルの診断(免疫学的診断:通常筋生検で実施)が基本ですが、遺伝子が未同定な疾患も多いため、一般的な筋病理による筋ジストロフィーの所見(筋肉の壊死・再生)を確認することでも可としています。一般病理による診断の場合は、他の疾患で無いことを確認することも必要です。
既に、病気が進行していて筋生検が困難な患者様もおられます。このような場合、血縁者の中に確定診断を受けておられる方がおられれば、そのデータ利用できる場合もあります。詳しくは担当医にご相談下さい。筋ジストロフィーでは新規治療の開発が進みつつあります。こうした治療薬を利用するには正確な診断がなされていることが必要です。筋生検は進行してから実施することは困難ですが、検体を凍結保存しておけば現時点で診断がつかなくても、将来診断技術が確立した時に調べ直すことができます。臨床症状や遺伝子検査で診断困難な場合は、筋生検についても考慮ください。
指定難病の申請をするにはどのような検査で診断を受けていることが必要ですか?
- 診断根拠が残っていないと申請できない場合があります。
指定難病の申請は正確な診断情報が必要です。過去に筋生検を受けておられる患者様でも、所見が残っていない場合は申請が認められない可能性があります。診療記録(カルテ)の保存期間が過ぎていても、病理所見が診療記録とは別に保存されている場合があります。また、診療情報提供書(紹介状)に所見が記録されている場合もあります。記録がどこかに残っていないか探してみて下さい。
血縁者の中に確定診断を受けておられる方がおられれば、そのデータが利用可能な場合もあります。詳しくは担当医とご相談下さい。
30年前に筋生検を受けて筋ジストロフィーと診断されています。遺伝子診断は受けていません。長い間受診していなかったため、当時の記録が残っていないと言われましたが申請は可能でしょうか?
- 合併症が基準を満たせば申請可能です
筋ジストロフィーでは、多くの場合運動機能障害が主な症状です。しかし、一部の疾患では運動機能障害が起きる前に、心不全、不整脈、呼吸不全、嚥下障害、その他の合併症から発症する場合もあります。このため、筋ジストロフィーの重症度基準では生活や生命に重大な影響を及ぼす、生活能力(modified Rankin scale)、食事・栄養、呼吸、循環の4項目を挙げ、どれかが基準を満たせば申請可能としています。患者様が自覚していなくても、これらの障害が見られる場合があります。担当医とご相談いただければと思います。
運動機能が良い場合は申請できないのでしょうか?
- 男女の区別はありません
筋ジストロフィーの代表的疾患であるジストロフィノパチー(デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー)(X染色体連鎖)が男性に主に発症するため、筋ジストロフィーは男性の病気と誤解されている方もおられますが、多くの筋ジストロフィーは男女の区別無く生じます(常染色体顕性(優性)/潜性(劣性)遺伝形式)。また、ジストロフィンの片方に変異を持ち運動障害や心不全を呈する女性の存在も知られるようになっています(女性ジストロフィノパチー)。このような場合も正確な診断と重症度基準を満たせば申請が可能です。男女の区別はありませんのでご安心下さい。
女性でも申請できますか?
- 2017年に見直しが行われましたが、従来通りの対応で問題ありません。肢帯型筋ジストロフィーや先天性筋ジストロフィーには様々な疾患が含まれています。責任遺伝子の同定が進んで従来の命名法での管理が困難になったことを契機に、2017年に欧州の神経筋センター(ENMC)において肢帯型筋ジストロフィーの定義や命名法の見直しがなされました(詳細はLGMD新旧命名法比較表を参照ください)。これにより、一部の疾患で筋ジストロフィー以外とされたもの、疾患概念が未確立とされたもの、新たに筋ジストロフィーとされたものなどが生じています。現在指定難病を取得されている方については、引き続き現在の病名での継続が可能です。新しい分類で筋ジストロフィーに分類されたものは筋ジストロフィーで、他の指定難病に該当する場合は、そちらの疾患での指定難病取得を改めて行うことも可能です。指定難病名を変更する場合には、「難病指定医」に申請書類を記載してもらう必要がありますので、担当の先生とご相談ください。
「LGMD新旧命名法比較表」
肢帯型筋ジストロフィーの分類が変わったと聞きました