ファロー四徴症(指定難病215)

ふぁろーしちょうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

出生後チアノーゼがあり、ファロー四徴症と診断されました。無酸素発作を起こす可能性があるといわれましたがどのような発作でしょうか?

ファロー四徴症の右室流出路狭窄が強い症例で、啼泣時や発熱時に全身チアノーゼが強くなって低酸素血症を生じる発作のことです。この発作は、赤ちゃんが泣いたり興奮したりして右心室の流出路がさらに狭くなって肺血流が減少することで起こる場合と、哺乳、発熱、入浴などで全身の末梢血管が開くことで肺に流れる血液が減少することで起こる場合とがあります。急に不機嫌になり、チアノーゼと呼吸困難が強くなり、高度になると、意識がなくなったり全身のけいれんを起こしたりすることがあります。哺乳後や入浴後に急に顔色が悪くなりぐったりする場合もあります。通常10分程度で自然に改善することが多いですが、長時間続く場合は死亡することもあります。貧血があると、チアノーゼが目立たなくなる上、このチアノーゼ発作を起こしやすくなるので注意が必要です。

ファロー四徴症はいつごろ手術をするのでしょうか

チアノーゼの強い症例やチアノーゼ発作を起こす症例では、乳児期に低酸素血症を改善するために、手に血液を送る動脈(鎖骨下動脈)と肺動脈を、人工血管を使ってバイパスする姑息的な手術であるブラロック・トーシッヒ短絡手術が行われます。心臓内部の血液の流れを治療する手術(心内修復術)は、通常1歳前後で行われ、具体的には、心室中隔欠損閉鎖術と右室流出路形成術が行われます。肺動脈閉鎖をともなう場合は、人工血管などの導管を使用するラステリ手術が行われます。この場合は、将来的な導管狭窄のリスクなどを考えて十分な太さの導管を入れる必要があるので、ある程度成長した2歳前後に行われることが多いです。

ファロー四徴症術後、妊娠出産は可能でしょうか?

心内修復術後特に遺残症や続発症がない場合には、通常通りの妊娠出産が可能です。術後右室流出路狭窄が遺残している場合や肺動脈閉鎖不全のために右室拡大を生じている場合など術後の遺残症がある場合には、病態の程度により妊娠中の管理が必要となる場合があるため妊娠を考える場合には事前に専門医に相談することが必要です。妊娠中ばかりでなく、出産後の産褥期に心不全の増悪などを生じることもあり、出産後6ヶ月は十分に注意が必要です。また感染性心内膜炎の予防は常に必要になります。

ファロー四徴症修復術後の肺動脈弁逆流で再手術が必要と言われました。開胸せずにカテーテルで経皮的肺動脈弁置換術(TPVI)を行うことは可能でしょうか?

ファロー四徴症術後遠隔期にみられる続発症である肺動脈弁逆流に対する肺動脈弁再置換術を経皮的に行う場合、ファロー四徴症の術後では、個々の患者さんごとに右心室流出路の形や肺動脈の形が大きく異なるため、また他の合併症が多岐にわたるため、一概に可能か不可能かを言うことは難しいです。また、TPVIは新しい治療法であるため、まだ長期に渡る有効性が十分には確立されていません。まずは可能性があるか無いかに関して、主治医の循環器医師(成人先天性心疾患専門医)とよくご相談の上、TPVIの可能性評価が必要と判断される場合には、成人先天性心疾患専門医修練施設(https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/)または小児の場合の日本小児循環器専門医修練施設-郡内修練施設(https://jspccs.jp/specialist/list/)、かつTPVI認定施設(http://j-tavr.com/tpvi.html#tpvi02,
http://j-tavr.com/document/tpvi_harmony_shisetsu_23030425.pdf)に勤務する成人先天性心疾患専門医(https://www.jsachd.org/specialist/list-specialist/)または(小児の場合)小児循環器専門医(https://jspccs.jp/specialist/list/)に情報提供を行いご検討されるのが良いと思います。

本疾患の関連資料・リンク

① 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/08/JCS2017_ichida_h.pdf
② 日本成人先天性心疾患学会ホームページ総合・連携認定施設一覧
https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/
③ 心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/06/JCS2018_akagi_ikeda.pdf

 

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上、円滑な移行医療、成人期以降の予後改善を目指した総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年7月)