脳内鉄沈着神経変性症(指定難病121)

のうないてつちんちゃくしんけいへんせいしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

 

1. 「脳内鉄沈着神経変性症」とはどのような病気ですか

脳内鉄沈着神経変性症は、中枢神経系に鉄が沈着し、脳機能障害を示す疾患群です。現時点では合計10 疾患が報告されており、鉄の沈着部位により若干症状が異なりますが、進行性の精神・神経症状と随意運動障害、ジストニアを中心とする不随意運動が主症状です。多くは小児期に発病しますが、一部の疾患では成人期に発症します。
現時点では、原因療法はなく対症療法が行われています。一部の疾患では脳深部刺激療法により症状が緩和されます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

きわめて稀な疾患で、100人に満たないと考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

特定の人に多いということはありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

脳内鉄沈着神経変性症では全ての病因遺伝子が明らかにされています。多くは常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を示し小児期発症ですが、神経フェリチン症は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)で成人期発症、成人期における小児期発症の神経変性を伴う停滞性脳症(SENDA)もしくはβ-プロペラ足場タンパク変異に伴う神経変性症(BPAN):NBIA5 はX 連鎖性顕性遺伝(優性遺伝)様式で20-30歳代に発症することが多いとされています。原因遺伝子は明らかとされていますが、遺伝子の変化によりできるタンパク質などが明らかとなって来ていますが、必ずしも病態のすべての原因とならないことも多く、さらに研究を進めていく必要があります。

5. この病気は遺伝するのですか

4.にお示ししました様にお病気により遺伝の仕方が異なります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

脳内鉄沈着神経変性症の臨床症状は精神症状として小児期にお病気になられると精神運動発達の遅れ、退行等が見られます。少し遅れて発症しますと、認知障害が見られます。神経症状では歩行障害などの随意運動障害、ジストニアを中心とする不随意運動がみられます。病型により特徴的な症状がありますが、乳児神経軸索ジストロフィー症では小脳運動失調症状、神経フェリチン症では舞踏運動などです。同じ遺伝子の変化が原因であっても変異による病気であっても、家系間、家系内で症状が異なることがあり、診断が困難なこともあります。検査所見としては、脳内鉄沈着神経変性症すべての病型で、脳内への鉄沈着像が認められますので、診断に役立ちます。その他の疾患により特徴的な検査所見として、無セルロプラスミン血症ではセルロプラスミン欠損、糖尿病などを、神経フェリチン症ではフェリチン値低値などがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

現在のところ根本的な治療法はなく、個々の症状に対しての治療を行います。根治療法は残念ながら確立されておりません。対症療法としては、薬物治療やボツリヌス毒素の局部注射療法などが行われております。脳深部刺激療法が一部の患者さんで有用です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

ゆっくりと進行する疾患群ではありますが、長期的には日常生活動作が高度に障害されることが少なくありません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

様々な症状に対して、適切な治療や指示を主治医からうけることです。病状の進行により、日常生活動作が徐々に障害をされることが多いのですが、まずはリハビリテーションを日頃から行い、身体機能を維持することがとても重要になります。体がふらつくことにより、転倒なども珍しくありません。転倒をした時に、骨折や頭部外傷などを生じると、その後の生活に大きく影響をします。リハビリテーションに加え、杖の使用、車椅子の使用など、状態に応じて適切な対応ができるよう、主治医との相談が重要です。排尿障害に関しても、尿路感染の原因などにもなりますので、主治医と相談をし、必要に応じて泌尿器などへの紹介をしてもらってください。病状が進行すると、 嚥下障害 、あるいは誤嚥による肺炎などのリスクも上昇します。食事の形態などにも病状に応じた注意が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

Pantothenate kinase-associated neurodegeneration:NBIA 1(旧名 Hallervorden-Spatz syndrome)
乳児神経軸索ジストロフィー(Infantile neuroaxonal dystrophy:INAD)、NBIA2
神経フェリチン症(Neuroferritinopathy:NBIA3)
無セルロプラスミン血症(Aceruloplaminemia (Hereditary ceruloplasmin deficiency):NBIA4)
Fatty Acid Hydroxylase-associated neurodegeneration(FAHN):dysmyelinating leukodystrophy and spastic paraparasis with or without dystonia, spastic paraplegia 35

11. この病気に関する資料・関連リンク

ジストニア診療ガイドライン2018(日本神経学会監修)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dystonia/dystonia_2018.pdf
The NBIA Disorders Association
http://www.nbiadisorders.org/ (英語)
 
GeneReviews® [Internet]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1141/ (英語)

 

情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和6年4月(名簿更新:令和6年6月)