グルタル酸血症2型(指定難病250)
1. 「グルタル酸血症2型」とはどのような病気ですか
生まれつき、脂肪や一部のアミノ酸などの代謝に重要な役割を果たす特定の蛋白質や 酵素 が十分働かない事が原因で起こる病気です。これが原因で最も問題となるのは脂肪の利用が出来なくなることです。通常、空腹時であってもからだにとって危機的なエネルギー不足にならない様に脂肪を切り崩しながら調整します。また、心臓や筋肉、肝臓、腎臓などのエネルギーをたくさん使う臓器では脂肪を燃料として多く使うことが知られています。グルタル酸血症2型ではこの様な臓器が中心となってダメージを受けます。しかし、同じ病気であってもその症状の程度にはかなりの差があります。新生児期から脳や腎臓の奇形を合併して発症し、極めて 重篤 な心筋のダメージなどによって早期に亡くなるお子さんから、乳幼児期に風邪などをきっかけにして低血糖をおこす、または体にとって有害な「酸」がたまる、筋力低下とし発症するお子さんもいます。最近では成人期に発症して筋痛、筋力低下を契機に診断される患者さんもいる事が知られています。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
100人未満と考えられていますが、正確な事は分かっていません。約200万人の日本で生まれた赤ちゃんを対象として行った 新生児マススクリーニング のパイロット研究では33万人に1人の割合でこの病気をもった赤ちゃんが見つかりました。
3. この病気はどのような人に多いのですか
男女差はありません。日本国内においては地域差も無いと考えられています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
それぞれの細胞の中でエネルギーを生み出すために非常に重要な役割を果たしている電子伝達フラビン蛋白という部分の仕組みが上手く機能しないために起こる事が分かっています。このために主に脂肪を分解してエネルギーを作る必要があるような場面で非常に重篤なエネルギー源の不足が起こる事が、この病気の様々な症状の原因となっています。
5. この病気は遺伝するのですか
グルタル酸血症2型は、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という遺伝形式をとる事が知られています。私達が両親からもらう遺伝子はペアなので、通常はある一つの遺伝子の片側だけに 変異 があって上手く機能しなくても、もう片方の遺伝子がカバーして働くので症状が出ることはありません。この様にして働く遺伝子を潜性遺伝子(劣性遺伝子)といいます。しかし、稀にともにグルタル酸血症2型の原因となる遺伝子に変異をもつ両親の間に子どもが生まれる場合、1/4の確立で二つとも変異をもった遺伝子をもつお子さんが生まれる可能性があります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
重篤な低血糖症によって脳がダメージを受けることで痙攣や意識障害などが起こります。全身の筋肉や心臓の筋肉(心筋)、肝臓が著しいダメージが起こることもあります。この病気では患者さんごとに症状の大小がかなり異なります。新生児期に発症する患者さんではいずれの症状も非常に重篤である事が知られていますが、学童期を過ぎると低血糖などの症状は次第に目立たなくなって来ることが知られています。成人になってはじめて筋力が落ちてきた事をきっかけに診断された患者さんもいます。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
最も重要なことは飢餓状態を防ぐために、それぞれの年齢に応じて決められた食事間隔をしっかり守る事です。食事療法として低タンパク・低脂肪・高炭水化物食を行うこともあります。リボフラビンというビタミンを大量に内服する事で症状の劇的改善が見られることがあります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
これまでの患者さんの数が極めて少ないために十分な情報がありませんが、新生児期に発症するお子さん達は救命が非常に難しいと知られています。それ以降に発症する場合は、感冒や胃腸炎にかかって飢餓状態になったとき、強い運動などで筋肉や心筋に大きな負担がかかったとき、発作的に上に説明したような症状が出現します。症状が出るまでは無症状の事も多いので、乳幼児突然死の原因にもなり得ると考えられています。学童以降では筋症状などが中心になりますが、小児期に診断された患者さんが成人期にかけてどの様な経過をたどるかについてはまだはっきり分かっていません。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
感染症罹患時や飢餓時、強い運動時などに急激に症状が増悪する事が知られています。指示された食事間隔をしっかり守るとともに、発熱や下痢、嘔吐時は速やかに医療機関を受診してブドウ糖という成分を含んだ点滴を早い段階で受ける事で発症を予防出来ます。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
・マルチプルアシルCoA脱水素酵素欠損症
・複合アシルCoA脱水素酵素欠損症
・リボフラビン代謝異常症
11. この病気に関する資料・関連リンク
タンデムマス・スクリーニング普及協会
https://tandem-ms.or.jp/
有機酸・脂肪酸代謝異常症のホームページ「ひだまりたんぽぽ」:親の会
https://hidamari-tanpopo.main.jp/
研究班名 | 新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の成人期にいたる診療体制構築と提供に関する研究班 研究班名簿 研究班ホームページ |
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情報更新日 | 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月) |