ヌーナン症候群(指定難病195)

ぬーなんしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ヌーナン症候群」とはどのような病気ですか

細胞内のRas/MAPKシグナル伝達系にかかわる遺伝子の先天的な変化によって、特徴的な顔貌(眼間距離の拡大など)、翼状頚、胸郭変形、 先天性 心疾患、肥大型心筋症、低身長などを示す先天症候群です。胎児水腫、難聴、出血性素因、血液凝固異常、停留精巣などをしばしば認めます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

海外の報告では出生1000-2500名に1人という報告がありますが、実態はまだ不明なところが多いです。国内では600人位ではないかと推定されますが、診断されていない患者さんもおられると考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

先天性の病気ですので小児期に気づかれますが、成人でもみられます。性差はありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

ヌーナン症候群類縁疾患の原因遺伝子として、これまでに細胞内のシグナル伝達経路であるRAS/MAPKシグナル伝達経路に関与する分子であるPTPN11SOS1SOS2RAF1RIT1NRASKRASLZTR1BRAFSHOC2PPP1CB, CBL遺伝子のいずれかに先天的な変異が報告されています。最近MRASRRASRRAS2などの新規原因遺伝子も同定されました。しかしながら、約20-30%の患者ではこれらの遺伝子に 変異 を認めず、まだ見つかっていない新しい病因遺伝子が存在すると考えられています。なぜこの先天性にRAS/MAPKシグナル伝達経路の変異を持つとこのような症状がでるのかは明らかではありません。ヌーナン症候群の原因となる主要な遺伝子に関しては保険診療で遺伝学的検査を行うことができます。

5. この病気は遺伝するのですか

LZTR1以外の遺伝子では 常染色体顕性遺伝(優性遺伝) 形式をとります1)患者さんのご両親のいずれかがヌーナン症候群である場合と、2)ご両親は変異を持っていない新生突然変異の場合があります。1)の場合は患者さんのきょうだいが同じ遺伝子変異を持つ確率は1/2になります。2)の場合は一般に患者さんのきょうだいが同じ変異を持つ確率は0に近くなります。いずれの場合でも患者さんの次世代(こども)には1/2の確率で遺伝します。LZTR1は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式と常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式を取ります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

低身長、翼状頚,胸郭変形、先天性心疾患、肥大型心筋症、停留精巣、様々な程度の知的障害などが認められます。ただし、それぞれの患者さんに必ずしもすべての症状が認められるわけではありません。ときに血液増殖性疾患(白血病)や固形腫瘍を合併します。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

患者さん1人1人で症状の組み合わせや強さは違いますので、症状に対する対症療法がおこなわれます。心疾患の早期発見と早期治療が、その後の症状の改善に有効です。また、- 2 SD以下の低身長に対しては3歳から成長ホルモン治療の適応となります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

先天性心疾患、肥大型心筋症、骨格異常、成長・発達の遅れが合併することが多いので、長期にわたって通院や治療が必要な可能性があります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

栄養・成長・発達、視覚、聴覚、心臓、骨格の診察などを定期的に病院で受け、必要な治療を受けていくことが重要です。歯科検診も重要です。発達の遅れに対しては療育が重要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

GeneReviews
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1124/
ヌーナン症候群における低身長に対するGH治療の実施上の注意
http://jspe.umin.jp/medical/gui.html
ヌーナン症候群の診断基準(改訂版)
http://jspe.umin.jp/medical/files/guide20231003.pdf

 

情報提供者
研究班名 成長障害・性分化疾患を伴う内分泌症候群(プラダーウイリ症候群・ヌーナン症候群を含む)の診療水準向上を目指す調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和6年6月)