原発性高カイロミクロン血症(指定難病262)

げんぱつせいこうかいろみくろんけっしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

Q1 カイロミクロンは体の中でどのような働きをしていますか?

A1 カイロミクロンは食事由来の脂質を組織に運搬する粒子です。食物に含まれる脂質(中性脂肪など)は、腸管(小腸)で吸収されたあと、血液の中を運ばれて、筋肉などに届けられ、エネルギー源となります。この運搬をしているのがカイロミクロンです。筋肉などの組織では、カイロミクロンの中の中性脂肪はリポ蛋白リパーゼという酵素で分解されて、エネルギーとして利用されます。小腸でのカイロミクロンの産生が増えたり、リポ蛋白リパーゼの働きがなんらかの原因で妨げられたりすると、高カイロミクロン血症となります。
この図は、食事由来の脂質をカイロミクロン粒子が体内の組織に運搬する役割を示しています

Q2 乳糜血清とカイロミクロンの名前の由来は何ですか?

A2 カイロミクロンは大きな粒子で、中性脂肪を大量に含んでいるため、カイロミクロンが血中に溜まると、血液は牛乳のような外見となります。これを乳糜血清といいます。chyle乳糜)と古代ギリシャ語で「小さい」を意味するμικρόν(mikrón)が組み合わされて、カイロミクロン(chylomicron、乳糜脂粒)という言葉が作られました。

Q3 高カイロミクロン血症と診断されたらすべて原発性高カイロミクロン血症が疑われるのでしょうか?

A3 生活習慣や他の病気、治療薬などの後天的・二次的な要因によってカイロミクロンの代謝が妨げられて高カイロミクロン血症となることがあります。これを二次性高カイロミクロン血症と呼びます。二次的な要因を除外しても、高カイロミクロン血症が続く場合には原発性高カイロミクロン血症がとくに疑われます。

高カイロミクロン血症をきたす後天的・二次的な要因
<他の病気によるもの>
糖尿病、腎臓病(ネフローゼ症候群)、神経性食思不振症、リポジストロフィー、Weber-Christian病、甲状腺機能低下症、先端巨大症、クッシング症候群、ネルソン症候群、自己免疫機序による高TG血症を来しうる疾患(特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病など)、異常蛋白血症、多発性骨髄腫、全身性エリテマトーデス(SLE)、悪性リンパ腫、リンパ性白血病、サルコイドーシスなど
<薬の影響によるもの>
エストロゲン、ステロイド、経口避妊薬、利尿薬、β遮断薬、レジン、抗精神病薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など)、痤瘡治療薬、抗悪性腫瘍薬(ベキサロテンなど)、ヒト免疫不全ウイルス治療薬、免疫抑制薬など
<生活・環境要因によるもの>
飲酒、妊娠、肥満など

 

情報提供者
研究班名 原発性脂質異常症に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月)