多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)
(1)線条体黒質変性症
(2)オリーブ橋小脳萎縮症
(3)シャイ・ドレーガー症候群
1. 線条体黒質変性症とは
多系統萎縮症という疾患の一つの病型です。多系統萎縮症の中で、発症初期の症状がパーキンソン病に似た症状で、それを主な症状として経過するものを線状体黒質変性症と呼んでいます。抗パーキンソン病薬が効きにくい特徴があります。通常、排尿障害、立ちくらみなどの自律神経症状を伴い、病気の進行に伴い起立・歩行のふらつきなどの小脳症状が出現します。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
令和元年度末の統計では、多系統萎縮症の患者さんは全国に11,387人程います。そのうち、約30%がこの病型と推定されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
発症は成年期で、特に50歳代に多いです。
4. この病気の原因はわかっているのですか
病気の正確な原因はわかっていません。この病気の患者さんの脳内の細胞に、特徴的なタンパク質の凝集(封入体といいます)があることがわかっています。乏突起膠細胞(オリゴデンドログリア)や神経細胞の中にアルファ-シヌクレインというタンパク質が凝集した特殊な封入体が形成されます。また、発症への関与が疑われる遺伝子が複数知られています。これらを手がかりに発症機序の研究が進められています。
5. この病気は遺伝するのですか
通常は遺伝しません。極めてまれに血縁者が発症することがあります。このことから、この病気になりやすい体質(遺伝素因)があると想定されています。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
パーキンソン病に似て、表情に乏しく、筋肉がかたくこわばり、動作が遅く、緩慢になります。また、話しにくくなり、起立・歩行も不安定となり、転びやすくなります。まれながら、手や指の細かいふるえも見られます。やがて、立ちくらみや、尿の排出が困難になり便秘になるといった自律神経症状や、小脳の病変によるふらつきや話しにくさもみられます。多くの例では記憶障害(物忘れ)はきたしません。パーキンソン病と似た症状ですが、パーキンソン病の薬の効果が悪く、日常生活における不自由さなどの進行が早い場合には、この病気を疑います。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
病気の進行を止める治療は確立していません。それぞれの症状に対する治療を行います。歩きにくさ、書字の困難、話しにくさなどのパーキンソン病でみられる症状には、パーキンソン病の薬(レボドパやドパミン作動薬)を使います。しかし、これらの効果は著明ではありません。自律神経障害で尿が出にくいときは抗コリン薬、ノルアドレナリン遮断薬、コリン作動薬などを、血圧が下がってしまうときはノルアドレナリン前駆薬などを試みます(シャイ・ドレーガー症候群の項参照)。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
病気の進み方は、パーキンソン病より速いです。発病から5年ほどで車椅子使用となり、10年ほどで臥床状態を経て亡くなることが多いといわれています。
9.食事・栄養について
飲み込みにくさ(嚥下障害)を有する人が多いので、急がず、時間をかけて、飲む込み易いものを摂取するように工夫しましょう。嚥下障害があると誤嚥(むせ)による肺炎をきたしやすくなります。食事量の低下により低栄養状態となると体力も低下し、いろいろな感染症を起こしやすくなります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
オリーブ橋小脳変性症、シャイ・ドレーガー症候群、MSA、MSA-P、MSA-C