広範脊柱管狭窄症(指定難病70)

こうはんせきちゅうかんきょうさくしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.「広範脊柱管狭窄症」とはどのような病気ですか

広範脊柱管 狭窄 症とは頚椎、胸椎、腰椎の広範囲にわたり脊柱管が狭くなり、脊髄神経の障害を引き起こす病気です。頚椎部、胸椎部または腰椎部のうち、いずれか2カ所以上の脊柱管狭小化による神経症状により日常生活が大きく影響されることが診断の条件です。頚椎と胸椎の移行部または胸椎と腰椎の移行部のいずれか一カ所のみの狭小化は除かれます。<図1>は頚椎部、胸椎部、胸椎と腰椎の境、そして腰椎部、と複数個所に狭窄を呈している患者さんの脊髄造影後CTです。

脊髄の複数個所に狭窄を呈している患者さんのCT画像
図1 脊髄造影後CT: 複数個所の狭窄状態が確認できる

 

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

これまでに、「広範脊柱管狭窄症」の全国調査が行われたのは、厚労省の班会議により平成2年度までさかのぼってしまいますが、当時報告された患者さんの数は1,274人で年間で約2,300人と推計されていました。
令和2年度の特定医療費(指定難病)医療受給者証の所持者数は5,125人となっています。なお、認定までに至らない患者さんを含めると全体ではさらに多くの患者さんがいらっしゃると推定されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか?

男女比は2:1で男性に多く、中年以降特に60歳代に多く認められています。2カ所以上の狭窄部位は頚椎部と腰椎部の合併が7割を占めています。

4. この病気の原因はわかっているのですか?

病気の原因は現在のところ不明ですが、加齢とともに椎間板や椎間関節の 変性 や黄色靭帯の肥厚などにより脊柱管狭窄を生じてくることが考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか?

これまでのところ、遺伝性の関与は明らかにはされていません。ただ、脊柱管は生まれつき広い人と狭い人がいることが知られています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか?

頚椎の病変からは、手のしびれ、使いにくさ、下肢のしびれやつっぱり、歩行障害、頻尿などがおこります。胸椎からはこのうち、手以外の部位の症状が出ます。腰椎の病変からは、立ち上がった時や歩いた時の下肢の痛みやしびれが生じます。この病気では、これらの組み合わせにより、手足にさまざまな神経症状がおきます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

治療として局所の安静を必要とします。そのため固定装具等を用います。消炎鎮痛剤やビタミンB12、血流を改善させるプロスタグランジン製剤、あるいは神経障害性疼痛に効くとされるプレガバリン等の薬も使われますが、痛みが強い場合には神経ブロックが行われることもあります。保存的に治療しても効果がないときは入院して安静にしていただいたりたり、前記薬剤の点滴、また神経ブロックも併用したりすることがあります。
脊髄の麻痺症状が明らかな場合や、保存治療でも効果がみられない場合は手術療法を行います。頚椎部では狭窄部位に対しては後方から除圧する椎弓形成術が一般的ですが、前方からの手術も行われます。胸椎部では後方から椎弓切除術が行われます。腰椎部では後方から椎弓切除術や 拡大開窓術 などが行われます。いずれの場所でも、背骨と背骨の間にある椎間関節まで除圧の範囲が拡がってしまう場合には、金属と骨移植を併用した固定術を行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか?

重度の脊髄麻痺に陥ってしまった場合、手術を行っても回復はあまり良くありません。時期を失うとたとえ手術を行っても十分な改善が得られないことがあります。また大きな外傷で麻痺になった方も同様です。一般に、手や足に痛みあるいはしびれが存在する場合、症状は良くなったり悪くなったり反復しますので保存的治療を受けながら経過を観察します。しかし、手足の力が落ちて箸が使いにくくなったり、歩行障害が出たりする場合、また排尿や排便の障害がある場合は、手術療法を行わないと症状の改善は難しくなってきます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

 この病気があるからといって、活動を制限することも、極端に安静にすることも、特に必要ではありません。ただし、症状の変化には十分留意し、手足の痺れ、動きの悪化、感覚障害や、排尿排便の問題が出てきたら、必ず病院で相談して下さい。頸椎や腰椎に対して、急激な力を加えるような施術は避けるほうがよいでしょう。症状が改善しないか、悪化する場合には、整形外科や脳神経外科の専門医を受診して下さい。病態を把握し、正しく診断されることが第一です。悪化してからでは改善が思うように行かない場合がありますので、その点を良く覚えておいて下さい。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本整形外科学会HP https://www.joa.or.jp/
日本脊椎脊髄病学会HP http://www.jssr.gr.jp/

 

情報提供者
研究班名 脊柱靭帯骨化症に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)