MECP2重複症候群(指定難病339)
1. 「MECP2重複症候群」とはどのような病気ですか? |
乳児期早期からの筋緊張低下、重度の精神運動発達遅滞、進行性痙性麻痺、反復性感染症(呼吸器や尿路など)および薬剤抵抗性てんかんを特徴とする疾患です。乳児期から起こる呼吸器感染症をはじめとしたさまざまな感染症は日常生活を著しく制限することがあります。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか? |
本邦の患者数は約50名です。海外の報告では、出生10万人対0.65人(出生男児10万人対1人)の報告があります。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか? |
患者さんの多くは男の子ですが、女の子にも起こります。 |
4. この病気の原因はわかっているのですか? |
病因は、X染色体上にあるMECP2遺伝子の重複によります。X染色体上のタンデムな重複と常染色体への挿入、転座によるMECP2遺伝子領域の重複が報告されています。 |
5. この病気は遺伝するのですか? |
遺伝子の異常は遺伝するため、兄弟でMECP2重複症候群となることはありえます。また、患者の姉妹が遺伝子異常を有する保因者である可能性もあります。ただし、同じ遺伝子異常を有する母親は多くの場合は無症状です。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか? |
最重度知的障害、筋緊張低下、運動発達遅滞、進行性の下肢優位の痙性麻痺、頻回の呼吸器感染、便秘・嘔吐、薬剤抵抗性てんかんが主な症状です。乳児期では、筋緊張低下や吸啜が弱く栄養障害になりやすく、食道胃逆流による嘔吐もみられます。感染症は呼吸器だけでなく尿路感染症などもあります。そのほか、消化器症状(重度の便秘、嘔吐、胃食道逆流)や特徴的な顔貌(落ちくぼんだ目、眼間開離、広い鼻梁、小さな口、テント状の口、大きな耳)と身体特徴(細長い指と細長い爪)があり、アデノイド肥大、手・腕の常同運動、進行性の痙性麻痺などがみられます。 |
7. この病気にはどのような治療法がありますか? |
現在、根治療法はないため様々な症状に対する対症療法と療育が行われています。繰り返す呼吸器感染症や尿路感染症では、抗生剤や補液が必要になります。感染症に対する治療は、長期化し入退院を繰り返すことが多く、呼吸器感染症を繰り返すことによる呼吸障害は気管切開や酸素療法を必要とすることがあります。 |
8. この病気はどういう経過をたどるのですか? |
てんかんの合併が神経症状および発達に影響を及ぼすことから、早期から抗てんかん薬治療が行われますが、難治に経過します。乳児期から起こる呼吸器感染症をはじめとしたさまざまな感染症は日常生活を著しく制限することがあります。繰り返す感染症が生命予後に関連することから、気管切開や酸素療法などの呼吸管理を要することがあります。てんかんは、小児期に発症することが多く、神経症状や発達・認知にも大きな影響を与えますが、抗てんかん発作薬が効きにくく、難治に経過します。成人期においても薬物療法を中心に継続した治療が必要となります。筋緊張の異常と運動障害が見られ、ジストニアや痙性障害のため移動運動に制約が生じるため、長期にわたる介護を必要とすることがあります。また、便秘等の消化器症状に加えて、経口摂取が困難な際には非経口摂取のための処置と看護が必要となることがあります。 |
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか? |
様々な感染症が重症化することがあります。発熱などの兆候があれば早期に受診してください。また、てんかんは難治化するので、専門の医療機関の受診が必要になります。その他、誤嚥による肺炎の回避は重要で、嚥下機能を評価しながら食形態を変えていくことがあるかもしれません。 |
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。・アンジェルマン症候群、レット症候群、CDKL5欠損症、FOXG1症候群、ATR-X症候群、L1症候群、Lowe症候群、Coffin-Lowry症候群、Allan-Dudley-Herndon 症候群、Renpenning症候群、Juberg-Marsidi症候群などが症状に類似性があります。 |
11. この病気に関する資料・リンク |
(資料) |
研究班名 | レット症候群とその周辺疾患の臨床調査研究班 研究班名簿 |
---|---|
情報更新日 | 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月) |