LMNB1関連大脳白質脳症(指定難病342)
○ 概要
1.概要
LMNB1関連大脳白質脳症は、中枢神経系の大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患である。本症はAutosomal Dominant Adult-Onset Demyelinating Leukodystrophy (ADLD)とも呼ばれることがある。常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるが、孤発例も存在する。1984年にアイルランド系アメリカ人の家系が最初に報告されたが、世界各地において発症を認める。LMNB1関連大脳白質脳症は、遺伝学的検査による診断が可能となる以前は本症の確定診断が困難であったが、原因遺伝子が同定されて以降、確定診断例が蓄積している。
2.原因
LMNB1関連大脳白質脳症の原因としてLMNB1重複変異あるいはLMNB1のエンハンサー領域の欠失が同定されている。いずれの場合も中枢神経系のLMNB1発現量は増加しており、LMNB1タンパクの産生増加が疾患の原因と考えられている。
3.症状
常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である。発症年齢は平均47.5歳(35~61歳に分布)、40歳・50歳代に発症が多い。発達に異常はなく、発症前の社会生活は通常正常である。死亡時年齢は58.7歳(45~75歳に分布)である。初発症状は自律神経障害や錐体路徴候が多いが、認知機能障害で発症する例もある。主症状は自律神経障害、錐体路徴候、失調、認知機能障害である。発熱や感染症の合併などにより一過性に症状増悪を来すことがある。
4.治療法
原因が不明であるため根本的な治療法はない。症状に応じた対症療法が行われる。
5.予後
緩徐進行性の経過である。発症から死亡までの年数は平均12年(1~20年に分布)である。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
100人未満
2.発病の機構
不明(LMNB1発現量の増加による機序が想定される)
3.効果的な治療方法
未確立(対症療法のみ)
4.長期の療養
必要(進行性である。)
5.診断基準
あり(研究班作成の診断基準)
6.重症度分類
機能的評価 Barthel Index:85点以下を対象とする
○ 情報提供元
「治験を目的とした,成人発症白質脳症のレジストリーと評価方法に関する研究班」
研究代表者 新潟大学脳研究所脳神経内科 教授 小野寺理
<診断基準>
Definiteと Probable を対象とする。
A.症状・臨床所見
1.20歳以上の発症
2.下記の臨床症状
a.自律神経障害
b.錐体路徴候
c.失調
d.認知機能障害
B.検査所見
頭部MRIで下記の所見を認める
1.両側対称性の大脳白質病変
2.両側対称性の中小脳脚病変
C.遺伝学的検査
1.LMNB1遺伝子の変異(重複又は上流領域の欠失)
2.家族歴がある(家系内に発症がみられる)
D.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
血管性認知症、多発性硬化症、白質ジストロフィー(副腎白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィーなど)
<診断のカテゴリー>
Definite:A1かつA2の2つ以上の症状かつB1を満たし、C1を満たす
Probable:A1かつA2の2つ以上の症状かつB1かつB2かつC2を満たすが、遺伝学的検査は実施していない
Possible:A2のうちaからcのいずれか1つ、かつB2を満たすが、遺伝学的検査は実施していない
<参考事項>
・40歳代から50歳代の発症が多い。ただし、LMNB1の病的なコピー数変化を認めた例は、34歳から61歳と幅が広い。発症前は発育発達に問題なく、社会生活が可能であることが多い。
・大脳白質病変は初期には散在性のこともあるが、やがて融合し、左右対称性の白質変化を呈する。前頭葉・頭頂葉優位で、側脳室近傍の白質は保たれる傾向がある。中小脳脚病変は病初期から信号変化を認めることが多いが、信号変化の程度は症例間での差が大きい。なお、延髄から頚髄にかけての錐体路病変を認める症例も存在する。
・家族歴が明らかでないde novo変異と考えられる孤発例が少数報告されている。しかし、ほとんどは常染色体顕性(優性)遺伝性形式であり、浸透率はほぼ100%と考えられている。
<重症度分類>
機能的評価:Barthel Indexが85点以下を対象とする。
質問内容 |
点数 |
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1 |
食事 |
自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える |
10 |
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう) |
5 |
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全介助 |
0 |
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2 |
車椅子からベッドへの移動 |
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む) |
15 |
軽度の部分介助または監視を要する |
10 |
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座ることは可能であるがほぼ全介助 |
5 |
||
全介助または不可能 |
0 |
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3 |
整容 |
自立(洗面、整髪、歯 磨き、ひげ剃り) |
5 |
部分介助または不可能 |
0 |
||
4 |
トイレ動作 |
自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) |
10 |
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する |
5 |
||
全介助または不可能 |
0 |
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5 |
入浴 |
自立 |
5 |
部分介助または不可能 |
0 |
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6 |
歩行 |
45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず |
15 |
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む |
10 |
||
歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能 |
5 |
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上記以外 |
0 |
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7 |
階段昇降 |
自立、手すりなどの使用の有無は問わない |
10 |
介助または監視を要する |
5 |
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不能 |
0 |
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8 |
着替え |
自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む |
10 |
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える |
5 |
||
上記以外 |
0 |
||
9 |
排便コントロール |
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能 |
10 |
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む |
5 |
||
上記以外 |
0 |
||
10 |
排尿コントロール |
失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 |
10 |
ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む |
5 |
||
上記以外 |
0 |
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
- ADLD Center
https://adld.center/ - GeneReview Japan
白質ジストロフィー概説
http://grj.umin.jp/grj/leukodystrophy.htm
研究班名 | 成人発症白質脳症の実態調査とレジストリ作成の研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和7年4月(名簿更新:令和6年6月) |