ロウ症候群(指定難病348)
○ 概要
1.概要
先天性白内障、中枢神経症状(精神運動発達遅滞)、Fanconi症候群(低分子蛋白尿、近位尿細管性アシドーシス、低リン血症など)を3主徴とするX染色体連鎖型遺伝疾患であり、oculocerebrorenal syndrome of Lowe (OCRL)<眼脳腎症候群>とも呼ばれる。腎障害は進行性であり、末期腎不全に至る。
2.原因
X染色体に存在するOCRL遺伝子異常を原因とするX染色体連鎖型遺伝疾患である。OCRL遺伝子がコードする蛋白はphosphatidylinositol (4,5) bisphosphate 5 phosphataseであり、この酵素蛋白の活性低下により、基質であるphosphatidylinositol (4,5) bisphosphateが蓄積すると、細胞骨格のリモデリングや膜輸送に異常を来すと考えられている。その結果、近位尿細管における再吸収機構が障害され、Fanconi症候群を呈すると考えられるが、眼症状や中枢神経症状等を起こす機序については不明である。
3.症状
先天性白内障、精神運動発達遅滞、Fanconi症候群を呈する。50%の症例に緑内障を認める。低分子蛋白尿は必発である。Fanconi症候群によって低リン血症が続くと、くる病になる。その他、多尿、近位尿細管性アシドーシス、汎アミノ酸尿、腎性糖尿、高カルシウム尿症、腎石灰化などを呈する。強迫的な行動異常を呈することが多く、痙攣の合併も多い。また歯列の異常、歯肉増殖、下顎の発育不全、咬合異常を認める。血清CK値が高値となることが多い。腎障害は進行性であり、30~40代で末期腎不全に至ることが多い。女性保因者の診断に水晶体の白濁の有無が有用である。
4.治療法
Fanconi症候群に対する対症療法が中心となる。すなわち、代謝性アシドーシスや低リン血症、低カリウム血症の補正を行う。末期腎不全に至った場合は、透析または腎移植が必要となる。低カルニチン血症に対して、カルニチンの補充を行う。白内障に対しては生後早期の手術が必要である。精神発達遅滞や成長障害に対しては、積極的な経管栄養や言語療法、作業療法が勧められる。歯列の異常に対しては日常的な口腔ケアが必須であり、咬合を含めた積極的な歯列矯正が考慮される。
5.予後
腎機能による。末期腎不全に至った場合は、透析または腎移植が必要となる。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
約120人
2.発病の機構
不明(OCRL遺伝子異常を原因とするが、そのコードする蛋白の異常がFanconi症候群を起こす機序の詳細は不明である。また、眼症状や中枢神経症状を起こす機序も不明である。)
3.効果的な治療方法
未確立(対症療法のみである)
4.長期の療養
必要(進行性である)
5.診断基準
あり(研究班にて作成)
6.重症度分類
腎機能、視力、中枢神経障害のいずれかが一定の重症度を満たすものを対象とする。
○ 情報提供元
「小児腎領域の希少・難治性疾患群の全国診療・研究体制の構築」
研究代表者 北里大学医学部小児科学 教授 石倉健司
<診断基準>
Definiteを対象とする。
A.症状・臨床所見
1.先天性白内障
2.中枢神経症状(精神運動発達遅滞)
B.検査所見
尿中β2ミクログロブリン 5,000 µg/L以上
C.遺伝学的検査
OCRL遺伝子の病的変異
D.鑑別診断
Dent病、ミトコンドリア病、ガラクトース血症、遺伝性果糖不耐症、Fanconi-Bickel症候群
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの2項目すべて、かつBおよびCを満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外する
Probable:Aの2項目すべて、かつBを満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外する
<参考事項>
・平成27-28年厚生労働科学研究「尿細管性蛋白尿を呈する遺伝性疾患の全国調査」(H27-難治等(難)-一般-037)において、ロウ症候群の全例が尿中β2ミクログロブリン 5,000 µg/L以上を呈した。
<重症度分類>
腎機能・視力・中枢神経症状のいずれかが以下の重症度を満たすものを対象とする。
1)腎機能
CKD重症度分類ヒートマップで赤の部分を対象とする。
2)視力
視覚障害:良好な方の眼の矯正視力が0.3未満
3)中枢神経障害
機能的評価:Barthel Index 85点以下を対象とする。
質問内容 |
点数 |
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1 |
食事 |
自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える |
10 |
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう) |
5 |
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全介助 |
0 |
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2 |
車椅子からベッドへの移動 |
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む) |
15 |
軽度の部分介助または監視を要する |
10 |
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座ることは可能であるがほぼ全介助 |
5 |
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全介助または不可能 |
0 |
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3 |
整容 |
自立(洗面、整髪、歯 磨き、ひげ剃り) |
5 |
部分介助または不可能 |
0 |
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4 |
トイレ動作 |
自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) |
10 |
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する |
5 |
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全介助または不可能 |
0 |
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5 |
入浴 |
自立 |
5 |
部分介助または不可能 |
0 |
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6 |
歩行 |
45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず |
15 |
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む |
10 |
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歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能 |
5 |
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上記以外 |
0 |
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7 |
階段昇降 |
自立、手すりなどの使用の有無は問わない |
10 |
介助または監視を要する |
5 |
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不能 |
0 |
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8 |
着替え |
自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む |
10 |
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える |
5 |
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上記以外 |
0 |
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9 |
排便コントロール |
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能 |
10 |
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む |
5 |
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上記以外 |
0 |
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9 |
排尿コントロール |
失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 |
10 |
ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む |
5 |
||
上記以外 |
0 |
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。