下垂体前葉機能低下症(指定難病78)

かすいたいぜんようきのうていかしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

成長ホルモンとして内服薬や点鼻薬がインターネット通販で宣伝されていますが、本当に有効なのでしょうか。

成長ホルモンは分子量の大きな蛋白ホルモンですので、飲み薬として内服すれば胃や腸で分解され、また点鼻で投与してもほとんど吸収されないので無効です。主治医の指示に従い、適切な量を毎日自己注射する現在の方法が有効な治療法です。また2021年12月より週1回製剤が使えるようになりました。

ステロイドは副作用の多い危険な薬であるという話を耳にしますが、長期間飲み続けていても大丈夫でしょうか。また一度飲みだしたら止められないのでしょうか。

下垂体前葉機能低下症の患者さんに用いるステロイド(ヒドロコルチゾン)は、健康人の血液の中に存在するホルモンと同じもので、欠乏している必要なホルモンを補う治療ですので、飲まない方が危険です。また内服することにより健康人と同じレベルのホルモンを保っている訳ですから、服用中のホルモン量が適切である限り、副作用の心配はありません。しかしながら下垂体の機能が回復しない限り、内服は生涯続けることになります。

発熱やストレス時にはヒドロコルチゾンを多めに服用するよう指示されていますが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。

具体的な方法は、主治医の先生に御確認ください。一般的には、37.5℃以上の発熱で通常量の2倍、38℃以上で3倍程度を内服しておくことが無難です。なお、学業試験などの精神的ストレスでは増量は不要とされています。また嘔吐などで服用できない時には点滴での投与が必要ですので必ず主治医に相談してください。
ストレスの大きな検査(内視鏡など)や手術を受ける際は、ステロイド補充療法中であることを担当の主治医に必ず申告してください。場合によっては注射によるステロイド補充が必要となることもあります。

ステロイドカードはどのようにして入手できるのでしょうか。

内分泌の専門医外来には準備されているところが多いようです。主治医の先生に相談してください。

ヒドロコルチゾンと甲状腺ホルモン剤を内服中ですが、風邪薬や胃腸薬など他の薬剤と一緒に飲んでも大丈夫でしょうか。

一般的な薬の短期間の併用は問題のないことが多いです。基本的には他にどんな薬を処方されてもヒドロコルチゾンや甲状腺ホルモンを中断してはいけません。一方で抗結核薬(リファンピシン)や抗痙攣薬はヒドロコルチゾンの作用を弱める可能性があります。他の病気で長期間薬を内服する場合は、主治医に相談しておくことをお勧めします。

下垂体機能低下症でプロラクチン分泌も障害されていると言われましたが、健康に支障はないのでしょうか。

プロラクチン分泌低下による主な症状は、出産後の乳汁分泌の低下です。プロラクチンには他の生理作用も報告されていますが、現在のところ、プロラクチン分泌低下症に対しての特別な治療はなく、また健康に明らかな問題はありません。

 

情報提供者
研究班名 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)