下垂体性PRL分泌亢進症(指定難病74)

かすいたいせい(PRL)ぶんぴつこうしんしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 下垂体性PRL分泌亢進症(プロラクチノーマ)とはどのような病気ですか

プロラクチノーマは、乳汁分泌作用のあるホルモンであるプロラクチンが過剰に産生される下垂体腫瘍です。高プロラクチン血症により月経異常や不妊症となり、妊娠・出産していないのに乳汁漏出がみられます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

平成11年度(1999年度)の厚生労働省研究班による全国調査では、1998年1年間の推定受療患者数が、プロラクチノーマを含むプロラクチン分泌過剰症で12,400名と報告されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

プロラクチノーマは、男女比は1:3.6と男性には少ないですが、男性では大きな腫瘍でみつかることが多いです。発症年齢は、女性では21~40歳に多くみらますが、男性では20から60歳にかけて均一に分布しています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

プロラクチノーマが発生する原因は、一部を除きまだ十分にわかっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝は大多数の例で関連ありません。プロラクチノーマの一部に、遺伝が関与する疾患として、プロラクチノーマ以外に副甲状腺や膵臓に腫瘍が発生する多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)があります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

プロラクチノーマの女性では月経不順、無月経、不妊、乳汁分泌が、男性では性欲低下、インポテンス、不妊やまれに女性化乳房、乳汁分泌がみられます。プロラクチノーマが大きい場合、圧迫症状として、頭痛、視力視野障害がみられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

プロラクチノーマに対する治療の第一選択は、薬物療法です。ドパミン作動薬であるカベルゴリン、ブロモクリプチンやテルグリドを内服します。薬物による治療成績は良好で、治療開始後速やかに血中プロラクチン値は基準範囲内に低下し、乳汁漏出や月経異常の軽快、下垂体腫瘍の縮小が得られます。薬が効かない一部の腫瘍や副作用のため薬の継続が困難な場合には外科治療を行います。腫瘍の大きさなど一定の条件を満たしたプロラクチノーマは、熟達した脳神経外科専門医による外科的摘出で治癒が期待できます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

ドパミン作動薬を2年以上内服し血中プロラクチン値が基準値内となっても、依然として下垂体腫瘍が消失しない場合は内服の継続が必要です。服薬中止を検討できる条件として、2年以上薬による治療を継続することにより、血中プロラクチンの正常化と下垂体MRI検査で腫瘍の消失がみられた場合が挙げられます。閉経前の女性でプロラクチノーマによる無月経を長期間放置すると、骨密度が低下し骨粗鬆症となります。プロラクチノーマ女性例では、ドパミン作動薬の規則的な内服や妊娠・出産により、下垂体腫瘍が自然に消失することもあります。

9. この病気の治療でどのような注意が必要ですか

自己判断でのドパミン作動薬の服薬中断で、下垂体腫瘍が増大することがあります。指示された用法や用量を守り、定期的に医療機関を受診することが必要です。またドパミン作動薬には、はき気、おう吐、起立性低血圧に加え、衝動を抑えることができない症状(賭け事をやめられない、買い物依存症、むやみにたくさんの食べてしまう等)を認めることがあり、ドパミン作動薬の減量、中止が必要となる場合があります。またドパミン作動薬であるカベルゴリンを高用量(週2.5mgを超える場合)で長期間内服している場合、心臓弁膜症の可能性を考え、心エコーなどでのチェックが必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

無月経・乳汁漏出症候群

11.この病気に関する資料・リンク

日本内分泌学会 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版(厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業.間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/99/S.July/99_1/_pdf/-char/ja

用語解説:
乳汁漏出(にゅうじゅうろうしゅつ):男性や出産後以外の女性に乳汁が分泌されることです。
無月経(むげっけい):性成熟期を迎えた女性で、月経が来ない状態をさします。
視野障害(しやしょうがい):目が見える範囲が、狭くなったり一部が欠けたりする状態です。
骨密度(こつみつど):骨の強度を表す指標の1つで、低下すると骨粗鬆症となり骨折しやすくなります。

 

情報提供者
研究班名 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月)