神経有棘赤血球症(指定難病9)

しんけいゆうきょくせっけっきゅうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「神経有棘赤血球症」とは

舞踏運動 、精神神経症状、行動異常、時に認知症などの神経症状を示す遺伝性の神経疾患です。血液検査は金平糖のようにトゲトゲがある赤血球(有棘赤血球、アカントサイトと呼びます)を認めます。赤血球にトゲトゲがみられる変化と脳病変との関連は不明ですが、これらがそろった状態が数種類の病気で見られるため、何らかの関連があると推定されています。これらの症状はいつのまにか始まり、ゆっくり進行します。
精神神経症状の原因は、脳の特定の部分の障害に基づくと考えられています。このため、診断の根拠の一つとして、病気の状態を検査するためにMRIなどの画像検査をおこなうことがあります。神経有棘赤血球症にはいくつかの病気が含まれていますが、指定難病は有棘赤血球舞踏病とMcLeod症候群です。両疾患とも原因の遺伝子が明らかとされていますので、確実な診断をすることができます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

神経細胞が 変性 することによって症状が出てくる疾患を対象に研究を進めている神経変性班による大まかな調査では、全国に約100名程度の患者さんがいると推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

男女差はほとんどありません。成人期に発症することが多く、30歳ぐらいで発症することが多いですが、様々な年齢で発症する患者さんがおられます。子どもから青年期での発病はないようです。

4. この病気の原因はわかっているのですか

病気の原因となる遺伝子は明らかにされていますが、病気の原因となる遺伝子の変化にはいろいろな種類の変化があることがわかってきました。このため、この病気であることを遺伝子検査で明らかにすることは、難しいとされています。今後、遺伝子 変異 を持っていても病気にならない理由や、遺伝子そのものの働きなどが明らかとされるものと期待しています。

5. この病気は遺伝するのですか

 有棘赤血球舞踏病は、通常、常染色体上の遺伝子変異が父親由来と母親由来の変異の2つが受け継がれて発症します。
 McLeod症候群の原因遺伝子はX染色体上にあります。女性は2本のX染色体を持っていて、変異があるX染色体を受け継いでも変異のないX染色体も持っているため、一般的には、女性は発症しません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

・初発症状
口の周りにみられる 不随意運動 、発作的に意識が無くなってひきつけを起こす「てんかん発作」、強いこだわり、幻覚や妄想、抑うつなどの「精神症状」などで発症することが多いとされています。
 
・舞踏運動(コレア)
自分の意志とは無関係に生ずる顔面・四肢のすばやい動きのことです。舌や口唇の不随意運動のため、発音がはっきりせずにコミュニケーション障害を起こしたり、食べ物の飲み込みに問題が起こったりすることもあります。
 
・認知障害、行動異常
認知障害は比較的軽く、むしろある事柄にこだわりを持つというような 強迫症状固執 性を示すことが多いようです。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

残念ながら、現在のところ根本的な治療法はありません。不随意運動に対応した薬剤を使用することがあります。そのためには、脳神経内科専門医によるコントロールが必要です。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

発症年齢、臨床症状により様々で一概にはいうことはできません。同じ家系内でも、症状がいろいろであることもあります。咬舌や咬唇などによる変形などによる美醜の問題や、強迫的言動により、社会生活が困難になることもありますが、それまでには一般には10年以上経過しているとされています。

9. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

有棘赤血球舞踏病
McLeod症候群
Levin-Critchley症候群

 

情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)