スタージ・ウェーバー症候群(指定難病157)

すたーじ・うぇーばーしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「スタージ・ウェーバー症候群」とはどのような病気ですか

脳の表面を細かな血管が覆う軟膜毛細血管奇形と顔面の痣であるポートワイン母斑、眼圧上昇を特徴とする生まれつきの病気です。てんかん、発達障害、運動麻痺、視力障害などが問題になります。顔面のポートワイン母斑やてんかん発作で気がつかれる事が多い病気です。脳、皮膚、目の症状の全てが揃うもののみでなく、いずれかが欠けるものでもスタージ・ウェーバー症候群と診断されます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

年間50,000〜100,000出生に1人の発症と考えられています。現在の日本の出生数で考えると、1年間に10〜20人の発症があります。成人の患者さんを含めた総患者数だと本邦には約1,000人の患者さんがいることになります。

3. この病気はどのような人に多いのですか

発生要因は分かっていません。生まれつきの病気ですが、母体妊娠中の感染や薬剤使用などは発生要因になりません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

最近、遺伝子変異が報告されましたが、まだ確定的なものではないと考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝子変異は報告されていますが、遺伝性の疾患とは考えられていません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

神経の症状では、脳の血液の循環が悪くなることで生じる運動麻痺や片頭痛、てんかん発作があります。てんかん発作は、手足のピクツキやけいれんの様に目立つ症状の他に、動作が停止してぼーっとしているなどの分かりづらいものも含まれますのでよく観察をしていないと見逃してしまう事も多く、注意が必要です。また、一旦発作が起こるとなかなか止まらなくなる重積を起こすこともあります。循環不全とてんかんによって発達が遅れてしまうことが重大な問題とされます。はっきりとしたてんかん発作がなくても、分かりづらい発作が継続していることで発達障害を起こしてしまうこともあり、発達の遅れがあるときにはてんかんに対する検査が必要です。その他、やはり循環不全より片頭痛を生じることもあります。成人ですと頭痛の訴えがありますが、小児の場合には機嫌が悪かったり、嘔吐をしたり等の症状のみで頭痛の訴えがないこともあります。
目の症状としては、眼圧が上がる事で視力、視野障害がでることがあります。小児においてもこの緑内障が起こることがあります。見えづらさや眼球の大きさに左右差があるような際には小児眼科医の診察が必要となります。
皮膚、特に顔面に赤〜赤紫色の痣(ポートワイン母斑)が生まれつきあります。母斑は美容面で気になる症状ではありますが、ポートワイン母斑以外にも顔面を含む頭部の左右差のため、咬合不全などを生じることもあり、適切な治療を要することもあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

神経の症状、特にてんかんに対しては、抗てんかん薬による治療がまず行われます。抗てんかん薬により発作が止まる例は50〜60%になると考えられています。内服治療を行っても発作が抑制されない例には、発作抑制と発達促進を目的に脳外科手術の適応を考えなければなりません。薬の治療、手術治療の手段に係わらず発作が抑制されることで発達が促されることになります。
目の緑内障には、眼圧を下げる点眼薬を用いる事がまずなされますが、点眼薬による治療で効果が乏しいときには、手術治療を行うこともあります。顔面の母斑については、皮膚科や形成外科でレーザー治療が行われる事が多く、数回にわたるレーザー治療で改善が期待されます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

抗てんかん薬の効果がある例には内服を継続することで発作を抑制することは可能です。しかしながら、長期の観察で発作が再発してくることもあるので、基本的には内服を継続することが望ましいと思われます。頭蓋内血管腫の範囲がわずかの例は薬の効果が期待できますが、範囲が広い例では薬での発作抑制は困難なことが多く、脳外科手術による治療を行う事になります。手術において血管腫に覆われた脳を摘出もしくは離断(正常脳から切り離す手術)する事で多くの例で発作は抑制されると考えられています。しかしながら、運動野や言語野といった重要な部位も手術操作部になる事もあり、その際には後遺症を考えなくてはなりません。小さな子どもでは一旦失った運動機能や言語機能が代償され後遺症は軽減されることが分かっており、最終的な後遺症の程度を予測して手術は行われています。よって、発作を抑制し、発達を促す事が後遺症よりも大きな意味を持つと考えられたときに手術を行うことになるのです。
緑内障を全く生じていない例もありますが、小児期より眼圧の上昇を来してしまう例では徐々に進行していくことが多く、点眼治療でも手術治療でも抑制することが難しい時があります。
顔面血管腫に対しては、幼児期までにレーザー治療を行う事で改善が期待できますが、年長時や成人になってからのレーザー治療では、効果が減弱する傾向があります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

発達障害を最小限にすることが治療の目標になります。その為にはてんかん発作の有無を注意深く観察すると同時に、発作を抑制するための治療に専念する事が必要です。てんかん発作は重積になる事もあるため、なかなか発作が止まらない時には医療機関へ相談をした方が良いでしょう。緑内障がある患者さんでは、ゆっくりと進行することもあるので、目の見えづらさの訴えがなくとも小児眼科医による診察をしてもらった方がよいと思われます。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

別名はありません。また、深く関連する病名としてクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群〔指定難病281〕が考えられます。クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は1本の上肢または下肢のほぼ全体、またはそれ以上の範囲にわたる混合性脈管奇形で、四肢の大きさや形に左右差が生じるものですが、スタージ・ウェーバー症候群においても四肢の左右差が生じていることがあります。

11. この病気に関する資料・関連リンク

  • 稀少てんかんの診療指標、日本てんかん学会編、診断と治療社、2017
  • 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「稀少てんかんに関する包括的研究」
  • スタージウェーバー家族の会 http://sturge-weber.jp/
  • THE STURGE-WEBER FOUNDATION https://sturge-weber.org/

 

情報提供者
研究班名 稀少てんかんの診療指針と包括医療の研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)