鰓耳腎症候群(指定難病190)

さいじじんしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

この病気で精神発達、運動発達に遅れは出るのでしょうか?

多くの場合、鰓耳腎症候群では精神発達、運動発達は正常です。
難聴を原因として言語発達の遅れがみられることがあります。新生児聴覚スクリーニング検査などで難聴が発見されたら、早期に難聴のタイプや聴力に応じて補聴器・人工内耳・人工中耳・埋め込み型骨導補聴システム・骨導補聴器などの適切な治療を開始することが重要です。
まれに中等度から重度の精神発達、運動発達の遅れがみられることがあります。その場合は他疾患との鑑別も必要となります。

この病気の診断はどのようにされるのでしょうか?

鰓耳腎症候群の診断は、基本的には臨床症状で行われ、さまざまなタイプの難聴に加え、耳瘻孔や頸部瘻孔、耳介、外耳、中耳、内耳に生まれつきの形の異常があり、これに加えて何らかの腎臓の異常を認めた場合に診断されます。ただし、症状を部分的にしか有していない場合には、臨床症状と遺伝子診断の組み合わせで診断されます。遺伝学的検査では主にEYA1SIX1という遺伝子の病的バリアント(病気の原因となる遺伝子の塩基配列の違い)が見つかることがあり、診断の手助けになります。

遺伝学的検査は必ず受けた方がいいのでしょうか?

遺伝学的検査は必須ではありませんが、検査を受けることで診断が確定すること、家族内での遺伝学的な再発率(次のお子さんがこの病気になる確率など)を予測することなどのメリットがあります。また、症状を部分的にしか有していない場合には、臨床症状と遺伝子診断の組み合わせで確定診断されますので検査が必要となります。

遺伝学的検査を受けたいのですが、どこで受けられますか?

「鰓耳腎症候群の遺伝学的検査」は保険収載されており、遺伝カウンセリング体制の整った国内の医療施設で検査が行われています。検査を希望される場合は、まず、かかりつけの耳鼻咽喉科・小児科にご相談いただき、お近くで遺伝学的検査を行っている施設を紹介していただくことをおすすめします。また検査結果の際には遺伝カウンセリングとともに返却されることが推奨されていますので、臨床遺伝専門医との連携が可能な施設での検査をお奨めします。

この病気でどのような難聴になりますか?

鰓耳腎症候群に伴う難聴は、非常に多様な聴力を示すことが明らかとなっています。調査研究班が2020年から2023年に実施した調査では、難聴のタイプとしては約15%が伝音難聴、約40%が感音難聴、約30%が混合性難聴でした。難聴の程度としては聴力正常から重度難聴の場合がありますが、中等度難聴の患者さんが約40%で一番多いことが明らかとなっております。左右で聴力が異なるケースも約25%でみられています。このように、様々なタイプや程度の異なる難聴を示すため、耳鼻咽喉科を受診し聴力検査や画像検査などを受けて適切な治療方法を選択することが大切です。また、約40%の患者さんで進行性の難聴であることが明らかとなっていますので、定期的に補聴器などの調整が必要です。

この病気での腎臓の異常にはどのようなものがありますか?

代表的なものに腎低形成があります。これは生まれつき腎臓が小さく、機能として十分ではありません。また、2個あるうちの1個だけしか腎臓がない片側腎無形成や、尿の流れが悪い水腎症、生まれつき腎臓に嚢胞(ふくろ)が多数できて十分に機能しない多嚢胞性異形成腎などがあります。しかし鰓耳腎症候群であると遺伝子診断されても腎臓に病気がない方もいます。家族内で同じ遺伝子の変異を持っていても腎臓に病気があったりなかったりすることもあります。

この病気で出生前診断は行われていますか?

鰓耳腎症候群では一般に出生前診断は行われていません。

 

情報提供者
研究班名 難治性聴覚障害に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和6年11月(名簿更新:令和6年6月)