神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(指定難病125)

しんけいじくさくすふぇろいどけいせいをともなういでんせいびまんせいはくしつのうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)」とはどのような病気ですか

大脳白質 と呼ばれる脳神経の通り道が主に障害される神経の病気です。大脳白質の変化は、脳MRI検査によって感度よく検出することができます。中年期の成人にみられる病気で、物忘れや意欲低下、動作が鈍くなる、歩行障害などの症状がみられます。遺伝的な要因が関与する病気ですが、ご家族の中で同じ症状の方がみあたらないケースもあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

この病気の概念が比較的最近になり確立されたということもあり、正確な数字は不明です。外国と比較して、日本人では、この病気は比較的頻度が高いことが知られています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

発症年齢は10歳代後半から70歳までと幅広く分布しますが、多くは40歳~50歳代に発症します。男女比はほぼ同数です。生活環境や食事の影響などは病気の発症と関係ありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

この疾患の原因となる遺伝子はCSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)です。CSF-1Rは脳の中ではミクログリアという細胞に強く発現しており、ミクログリアの働きの異常が病気の原因と関係することが推測されています。しかしながら、詳細な 機序 は未だ不明です。

5. この病気は遺伝するのですか

CSF-1Rに遺伝子 変異 がみつかった場合には、 常染色体顕性遺伝(優性遺伝) 形式をとることがわかっています。この場合、患者さんの次の世代には1/2の確率で変異遺伝子が遺伝します。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

最初に見られる症状として物忘れ、遂行機能障害、仕事上のミスなど 認知機能 障害が最も多くみられます。抑うつ、意欲低下、性格変化などの精神症状や言葉がうまくでない失語で発症することもあります。20歳代の若年で発症する場合は、下肢のつっぱり感など痙性が初発症状となることがあります。経過中にみられる症状としては、パーキンソン徴候とよばれる動作緩慢や歩行障害などがあります。約1/3の症例でけいれん発作を認めます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

残念ながら病気の進行を阻止したり、治癒させるような治療は未だありません。それぞれの症状にあわせた対症療法やリハビリテーションを行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

病気を発症するまでは通常の日常生活や社会生活をされている方が多いのですが、一旦、病気を発症すると症状の進行は比較的速いという特徴があります。患者さんによって進行の度合いが異なりますので、将来の経過を予測することは難しいのですが、発病後5年以内に寝たきりになることが多いようです。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

食事や運動について制限はありません。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

ALSP (adult-onset leukoencephalopathy with neuroaxonal spheroids and pigmented glia)
CSF1R-related leukoencephalopathy

 

情報提供者
研究班名 成人発症白質脳症の実態調査とレジストリ作成の研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)