レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症(指定難病259)
れしちんこれすてろーるあしるとらんすふぇらーぜけっそんしょう
- コレステロールは、体のはたらきを維持するために不可欠な成分です。一方、使い古したコレステロールが蓄積すると体に有害な場合もあるため、HDLに乗って血液中を運ばれ肝臓へと送られ処理されます。HDLに運ばれるコレステロールは、HDLコレステロール(善玉コレステロール)と呼ばれます。この不要となったコレステロールをHDLに乗せるはたらきをするのが、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)という酵素です。
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症とは、このLCATのはたらきが弱かったり、体の中に十分な量を作り出すことができなかったりする病気です。LCATのはたらきが弱いとHDLが正常にはたらくことができず、不要となったコレステロールが分解処理されずに体のいろいろな組織に蓄積され病気を引き起こす原因となります。
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症はどのような病気ですか?
- LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)のはたらきがないと、HDLが正常にはたらくことができません。HDLコレステロールが著しく低いのが特徴です。角膜混濁もかなりの頻度で併発します。角膜混濁が進行すると、夜に見えづらくなる(夜盲)、車の運転が困難になるなど、日常生活に支障をきたす場合があります。患者さんの健康に大きく影響を与えるのは腎機能障害であり、たんぱく尿が出現し、そのまま放置すると腎臓の機能が著しく低下した状態(腎不全)となり透析が必要となる場合もあります。HDLコレステロールが著しく低い方は、LCAT欠損症だけでなく、動脈硬化が進みやすい他の病気である可能性もあり、早目に専門医(内科)に相談されることをお勧めします。
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症の症状にはどのようなものがありますか?
- これまで、出産に関するリスクは報告されていません。出産を希望される場合は、専門医の先生とよくご相談ください。
出産に関するリスクを教えて下さい。
- HDLコレステロールが著しく低く(25mg/dL未満)、角膜混濁があるとこの病気を疑います。さらにLCAT酵素の解析と遺伝子診断を行うことでHDLコレステロールが低くなる他の病気と区別することができ、確定診断とその遺伝状態を調べることができます。また遺伝子の変異の種類と重症度の間に関係があることから、遺伝子診断が治療の選択に役立ちます。たんぱく尿が見られると腎不全に進む可能性がありますので、腎臓の組織を直接採取して調べる腎生検という検査が役立つことがあります。
どのように診断しますか?
- 腎機能障害のある患者さんで低脂肪食がその進行を一時的に遅らせたという報告があります。ただ、対症療法であり腎機能障害を回避できるということではありませんので専門医と相談する必要があります。また、角膜混濁のため、眼が見えづらくなり、特に夜間の車の運転では注意が必要かもしれません。
日常生活において注意すべきことはなんでしょうか?
- 新基準では対象外となります。(背景として、体外診断用医薬品のLCAT活性測定キット(アナソルブLCATキット)が製造中止となり、臨床検査が受けられなくなっており、LCAT活性が必須項目としては不適という現状があります。これに替わる診断基準として、コレステロールエステル比の低下が採用されました。現行の基準を満たす(DefiniteおよびProbable)患者さんではLCATの欠損の結果として、コレステロールエステル比の低下を来たします。そこで、新基準でコレステロールエステル比の低下が必須項目となることで、本患者でありながら対象外となる患者さんはおられないものと考えます。)
新基準ではコレステロールエステル比の低下が必須項目に変更されているが、現行の基準でコレステロールエステル比の低下を満たしていない患者は、新基準では対象外となるのか?