コフィン・ローリー症候群(指定難病176)
1. 「コフィン・ローリー症候群(Coffin-Lowry syndrome)」とはどのような病気ですか
コフィン・ローリー症候群(Coffin-Lowry syndrome)は1966年Coffinらが記載した X連鎖性遺伝 性疾患です。中等度から重度の知的障害を認めます。他の症状として、特徴的顔貌、低身長、骨格変形、 先天性 心奇形などがあります。X染色体にあるRSK2(RPS6KA3)遺伝子の変異が原因です。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
出生4万人に1人程度といわれていますが、未診断例も含めると実際にはもっと多い可能性があります。
3. この病気はどのような人に多いのですか
乳幼児期に発達の遅れなどで症状が出現します。
4. この病気の原因はわかっているのですか
X染色体にあるRSK2(RPS6KA3)遺伝子の変異が原因です。神経系の機能で重要な役割をもつ遺伝子です。現在は遺伝学的検査が保険収載されています。遺伝学的検査を受ける際には、医療機関受診と遺伝カウンセリングが必要です。
5. この病気は遺伝するのですか
男性(染色体46,XY)はX染色体を1本しかないので、基本的には男性が罹患します。女性保因者(46,XX)はX染色体が2本あるので、無症状ないしある程度の知的障害や下記に示すような症状を認める場合もあります。X染色体の不活化の偏りが影響する可能性があります。母親が保因者の場合、兄弟で罹患する可能性があります。男性患者の娘は保因者になりますが、息子には遺伝しません。
遺伝について、ご不安な点がある場合、臨床遺伝専門医などの 遺伝カウンセリング を受けられることをお勧めいたします。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
- 発達・神経:乳児期に筋緊張が低く、運動発達が遅れます。歩行開始が2~3歳と遅いです。言語発達も遅れ、中等度から重度の知的障害を認めます。明るい性格ですがが、自傷行為などの行動異常を認めることがあります。この症候群に特有の症状で、「刺激誘発転倒発作」が幼児期以降の20%の患者で見られます。これは不意の触覚、音刺激、興奮刺激で誘発される発作で、驚いたようになって力が抜けて転倒しますが、意識は消失しません。この発作は脳波異常を伴わず、てんかんではありません。てんかんは5%で合併します。頭部CTやMRIでは脳室、クモ膜下腔の拡大を認めることがあります。一部の例で運動機能低下が進行する場合があります。
- 特徴的顔貌:コフィン・ローリー症候群児を診察した経験のある医師は、児の顔貌で診断を疑う可能性があります。目立つ前額、長い睫毛、眼間開離(両眼の間が広い)、眼瞼裂斜下(目尻がさがっている)、小顎、濃い眉、短く幅広の鼻、前向きの鼻孔、大きな口、厚い下口唇などが特徴です。加齢とともに特徴が明らかになる傾向があります。
- 四肢・骨格系:太く、分厚く、短いずんぐりした柔らかい手、先細りの指(もみじの葉様の手と呼ばれます)、末節骨の鍵穴様所見、小さい爪、靱帯の緩み(関節過進展)、扁平足を認めます。鳩胸などの胸郭の陥凹、胸腰椎の後彎、側彎の例があり、脊椎のレントゲン検査で変形を認めます。
- 成長:出生時の体格は正常範囲内ですが、生後成長障害、骨年齢遅延が見られます。通常成長ホルモンなど内分泌系検査は正常です。
- 循環器:僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の異常、心筋症、原因不明の心不全、大動脈、肺動脈の拡張などの例があり、心臓エコー検査で調べる必要があります。
- 歯科:歯の低形成、反対咬合、隙間のあいた歯並び、大きい切歯などがみられます。歯科受診が必要です。
- 耳鼻咽喉科:難聴合併例は少ないですが、言語発達の遅れがあれば、聴力低下の可能性があり、聴力検査が必要です。滲出性中耳炎にも注意します。
- 眼科:白内障、 網膜 色素 変性 症、乳頭萎縮、眼瞼炎に注意します。眼科の診察が必要です。
- その他:肛門脱、膀胱脱、小腸憩室、幽門 狭窄 、片腎、肛門位置異常、顔面色素沈着、腫瘍の合併の報告例もあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
疾患に対する特別な治療薬はありません。早期からの療育訓練が重要です。症状・合併症に合わせた治療を行います。刺激誘発転倒発作は、てんかんではありませんが、抗てんかん薬やセロトニン再取り込み阻害薬などが有効な場合がありますが、治療抵抗性です。転倒して頭部を打撲することがあり、保護帽が必要です。重度の場合、車いす移動を余儀なくされます。周囲の十分な注意が必要です。てんかんを発症した場合は一般的な抗てんかん薬治療を行ないます。側彎症の程度が強い場合は、コルセット装着など整形外科治療をうける必要があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
多くの患者さんは健康にすごすことができますが、先にのべたような合併症に注意が必要です。その児の発達状況に応じた、特別支援教育が必要となります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
多くの患者さんは健康にすごすことができますが、刺激誘発転倒発作が頻発する例では日常生活に影響がでます。なるべく驚かさないように配慮します。転倒しやすい場合は保護帽を着用するとよいでしょう。必要に応じて、車いすを利用します。進行性の脊椎変形や運動機能低下も要注意です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
11. この病気に関する資料・関連リンク
http://grj.umin.jp/grj/cls.htm
(英文)
http://www.clsf.info/
研究班名 | 患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月) |