フェニルケトン尿症(指定難病240)

ふぇにるけとんにょうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「フェニルケトン尿症」とはどのような病気ですか

食品の蛋白質に含まれている必須アミノ酸のフェニルアラニンをチロシンという別のアミノ酸に変える 酵素 の働きが生まれつき弱く、身体にフェニルアラニンが蓄積しチロシンが少なくなる比較的希な生まれつきの病気です。フェニルアラニンが蓄積すると精神発達に障害をきたし、チロシンが少なくなると色素が作れなくなり髪の毛や皮膚の色は薄くなります。また希に酵素の働きを助ける補酵素の欠乏でも同様のことが起こりますが、この場合はさらに神経の働きを伝える物質も少なくなるためより重い精神発達の障害が早期から出現します。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

この病気の発生頻度は約8万人出生で1人とされていますので、全国で500人程度と思われます。また補酵素の欠乏症は約170万人出生で1人とされていますので、全国で50人程度と思われます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気の危険因子などは報告されていません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

フェニルアラニンをチロシンに代謝するフェニルアラニン水酸化酵素、あるいはその補酵素、酵素を安定化する分子の先天的な異常が原因です。

5. この病気は遺伝するのですか

常染色体性潜性遺伝(劣性遺伝)形式を示す遺伝性疾患です。ご両親が保因者(因子は持っているが発症していない人)の場合、1/4の確率で病気を持った児が生まれることになります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

新生児期にはほとんど症状はありませんが、血液中フェニルアラニン値の高値が持続すると発達遅滞などの神経症状を発症することになります。増加したフェニルアラニンはネズミ尿臭のあるフェニルケトン体として尿に排泄されます。またチロシンの欠乏は赤毛や色白などの色素欠乏症を引き起こします。さらに補酵素の欠乏症では上記の症状に加えて早期からほ乳不良や夜泣き痙攣などより重い神経発達の障害が見られます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

食事中のタンパク質を制限してフェニルアラニンの摂取を抑え、不足する他のアミノ酸を治療粉乳で補う食事療法で治療ができます。一部の患者さんでは、内服薬や自己注射薬の併用で食事療法の軽減が可能です。補酵素欠乏症では食事治療の他、補酵素と神経の働きを助けるお薬で治療ができます。しかし、これらの治療は生涯にわたって必要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

低フェニルアラニン食事療法によって血液中のフェニルアラニンを一定の範囲にコントロールすることで発症を予防することができます。補酵素欠乏症でも治療を正しくしていれば正常に発育発達します。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

低フェニルアラニン食事療法が生涯にわたって必要なので、注意深い食事療法を継続する必要があります。また女性では妊娠する前から出産するまでの間、胎児に影響しない程度の血中フェニルアラニン値を維持することが必要です。このため妊娠を希望する場合は普段より厳しい食事治療が必要ですので、日頃からの定期的な通院管理が肝要です。また補酵素欠乏症では薬の飲み忘れは致命的な症状の発症につながりますので、薬の内服は毎日きちっと行うよう患児に対する教育が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

PKU
PAH欠損症
BH4反応性高Phe血症
BH4欠損症
GTPCH欠損症
PTPS欠損症
DHPR欠損症
PCD欠損症
DNAJC12欠損症

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本先天代謝異常学会ホームページ
https://jsimd.net/

 

情報提供者
研究班名 新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の成人期にいたる診療体制構築と提供に関する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年12月(名簿更新:令和6年6月)