ソトス症候群(指定難病194)

そとすしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
ソトス(Sotos)症候群は、NSD1遺伝子の機能異常による大頭、過成長、骨年齢促進、発達の遅れ、痙攣、心疾患、尿路異常、側彎などを呈する先天異常症候群。
 
2.原因
NSD1遺伝子(5番染色体長腕5q35領域に座位)のハプロ不全による。NSD1遺伝子を含む染色体微細欠失型(Low copy repeatによるゲノム病)とNSD1遺伝子内変異型とに分けられる。欠失型と変異型とでは一部症状の差異が指摘されている。
 
3.症状
大頭、過成長、骨年齢促進、発達の遅れなどを認める。
ソトス症候群は、典型的な顔貌、乳幼児期の過成長(身長ないし頭囲≧+2SD)、精神発達の遅れを特徴とする。その他に、行動障害、高頻度に先天性心疾患、先天性腎・尿路異常、脊柱側彎、てんかん発作なども認める。
 
4.治療法
根治療法はなく、対症療法として、てんかん、腎疾患に対しては必要に応じて薬物療法、心疾患に対しては必要に応じて手術や薬物療法を行う。
 
5.予後
主に、心疾患、腎疾患、難治性てんかんが生命予後に影響を与える。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約2,500人
2.  発病の機構
不明(遺伝子異常による。)
3.  効果的な治療方法
未確立(本質的な治療法はない。種々の合併症に対する対症療法)
4.  長期の療養
必要(発症後生涯継続又は潜在する。)
5.  診断基準
あり(学会承認の診断基準あり)
6.  重症度分類
1.小児例(18歳未満)
小児慢性特定疾病の状態の程度に準ずる。
2.成人例
成人例は、1)~4)のいずれかに該当する者を対象とする。
1)難治性てんかんの場合
2)先天性心疾患があり、薬物治療・手術によってもNYHA分類でⅡ度以上に該当する場合
3)気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸器使用の場合
4)腎不全を伴う場合。CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合
 
○ 情報提供元
「ソトス症候群のスクリーニング・診断システム確立班」
研究代表者 東北大学大学院 医学系研究科 精神・神経生物学分野 准教授 富田博秋 
「ソトス症候群のスクリーニング・診断システムの開発と実用化研究班」
研究代表者 東北大学大学院 医学系研究科 精神・神経生物学分野 准教授 富田博秋
「先天異常症候群の登録システムと治療法開発をめざした検体共有のフレームワークの確立」 
研究代表者 慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 教授 小崎健次郎
「国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討」
研究代表者 慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 教授 小崎健次郎 
「小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究」
研究代表者 国立成育医療研究センター 病院長 松井陽
 
 
<診断基準>
臨床診断例、確定診断例を対象とする。
 
ソトス症候群の診断基準
 
主要臨床症状1~3を認め、原因遺伝子(NSD1遺伝子等)に点変異を認めるか、NSD1を含む5番染色体長腕に欠失を認める場合に、ソトス症候群と診断が確定する。変異や欠失を認めない場合もあり、下記の症状のうち1~4を全て満たす場合に本症候群と臨床診断される。
 
Ⅰ.主要臨床症状
1.乳・幼児期の大頭症(≧2SD)
2.乳・幼児期の過成長(≧2SD)
3.頭が大きく長頭、大きい手足、前額・下顎の突出、高口蓋、眼瞼裂斜下、眼間開離を含む特徴的な外見
4.精神発達遅滞
 
 
 
<重症度分類>
1.小児例(18歳未満)
小児慢性特定疾病における状態の程度に準ずる。
 
2.成人例
以下の1)~4)のいずれかに該当する者を対象とする。
 
1)難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
 
2)先天性心疾患があり、薬物治療・手術によってもNYHA分類でII度以上に該当する場合。
NYHA分類

 

I度

心疾患はあるが身体活動に制限はない。
日常的な身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは
狭心痛(胸痛)を生じない。

II度

軽度から中等度の身体活動の制限がある。安静時又は軽労作時には無症状。
日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる 。

III度

高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常労作のうち、軽労作(例えば、平地歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる 。

IV度

心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
心不全症状や狭心痛(胸痛)が安静時にも存在する。
わずかな身体活動でこれらが増悪する。

NYHA: New York Heart Association
 
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。

NYHA分類

身体活動能力
(Specific Activity Scale; SAS)

最大酸素摂取量
(peakVO2

I

6METs以上

基準値の80%以上

II

3.5~5.9 METs

基準値の60~80%

III

2~3.4 METs

基準値の40~60%

IV

1~1.9 METs以下

施行不能あるいは
基準値の40%未満

※NYHA分類に厳密に対応するSASはないが、
「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
3)気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸器使用の場合。
 
4)腎不全を伴う場合。
腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合
 
CKD重症度分類ヒートマップ

 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

平成27年7月1日

情報提供者
研究班名 患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築班
研究班名簿 
情報更新日 令和3年9月(名簿更新:令和6年6月)