シトステロール血症(指定難病260)
1. 「シトステロール血症」とはどのような病気ですか
「シトステロール」は、果物や野菜、貝類に含まれる「植物ステロール」の1つです。シトステロールとコレステロールは構造が似ていますが、動物の体は植物ステロールを利用できません。そのため、野菜や果物などから摂取した植物ステロールはいったん小腸で吸収されますが、正常の方では再び腸の細胞からほぼすべて糞便中に排泄されます。しかし、この病気では、植物ステロールが排出されず、コレステロールとともに血管や組織に蓄積し、皮膚黄色腫やアキレス腱などの腱黄色腫、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の原因となります。植物ステロールだけでなく、コレステロールの多い食品(動物性のレバー・臓物類・卵類)を摂取することでLDLコレステロールが異常に高くなる場合があります
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
以前は、きわめてまれな病気と考えられていましたが、最近の遺伝学的研究から、日本に600名程度の患者さんがいらっしゃると考えられています
3. この病気はどのような人に多いのですか
両親からそれぞれ病気の原因遺伝子が二つ揃うと発症する常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとります。両親がいとこ婚など血族婚の場合には発症しやすくなることがあります。この病気の原因遺伝子を一つだけ持つ人は比較的多く、血族婚以外の夫婦の子どもにも発症します。シトステロール血症と診断された患者さんの兄弟姉妹がシトステロール血症である確率は4分の1です。
4. この病気の原因はわかっているのですか
小腸や肝臓で植物ステロールやコレステロールの排出に関係するATP結合カセットトランスポーター(ABC)G5/G8という遺伝子に変異があると発症します。
5. この病気は遺伝するのですか
遺伝します。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとります(3.も参照)。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
乳児期の母乳哺育により(母乳はコレステロールの含有量が高い)、皮膚黄色腫ができたり、LDLコレステロール値がとても高くなる場合があります。成人になると、肘、膝などの関節伸展部に瘤(こぶ)状の黄色腫ができたり、アキレス腱が太くなったりします。また、狭心症や心筋梗塞になりやすく、貧血、関節炎などの症状が出ることもあります。乳児でも高コレステロール血症や黄色腫が出現した場合には必ず専門医とご相談ください。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
食事療法が奏功します。できるだけ植物ステロールを摂らないようにしましょう。コレステロール低下薬のエゼチミブやコレスチミドといった薬を飲むと、植物ステロールとコレステロールの吸収が抑制され、植物ステロールやコレステロールが下がることが明らかとなっています。LDLコレステロールが高い場合には、コレステロールを多く含む食品をできるだけ避けるようにしましょう。コレステロールを下げるお薬として広く使われているスタチンは効果を示さないとする報告もありますが、有効であるとの報告もあります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
適切な治療を受けないと、狭心症や心筋梗塞を発症しやすく生命にかかわることがあります。20歳台で心筋梗塞を発症した報告もあります。早期に診断し、適切な治療を行うことが重要です。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
とうもろこし・ごま・ピーナッツ・大豆・なたね油・ゴマ油・米油・マーガリン・ナッツ・アボカド・チョコレート・貝類などが植物ステロールの含有量が多いとされていますので控える工夫が必要です。コレステロールの多い食品(動物性のレバー・臓物類・卵類)も控えるようにしましょう。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。