両大血管右室起始症(指定難病216)

りょうだいけっかんうしつきししょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

この病気は次の子供にも発症することがありますか?

家族性はほとんど認められていないので、同じ疾患が繰り返される頻度が特に高くなることはありません。他の疾患を含めた先天性心疾患の兄弟での発症率は通常の1%より高くなるとされています。一般に先天性心疾患の親から子へ何らかの先天性心疾患が遺伝する確率は、父親で1-3%程度、母親で2-12%程度とされています。

この疾患では再手術は必要ですか?

両大血管右室起始症は、いろいろなタイプがありますので一概には言えませんが、単純な心室中隔欠損の閉鎖の手術とは異なり、心内・心外導管を用いた手術や大血管転換術、またはフォンタン型手術などが行われることが多いので、術後に吻合部の狭窄や、導管の狭窄などにより再手術やカテーテル治療が必要な頻度は高いと考えるべきです。両大血管右室起始症のタイプと小児期に行われた手術の方法により再手術の適応が異なりますので、ファロー四徴症、心室中隔欠損をともなう肺動脈閉鎖症、完全大血管転位症、単心室症の項目を参照してください。

この疾患の手術後では、妊娠出産は可能でしょうか?

心内修復術後特に遺残症や続発症がない場合には、通常通りの妊娠出産が可能です。術後右室流出路狭窄や心内および心内導管に狭窄が遺残している場合や、肺動脈弁閉鎖不全のために右室拡大を生じている場合などの術後の遺残症がある場合には、病態の程度により妊娠中の母体心臓の管理が必要となります。妊娠を考える場合には、事前に主治医ならびに成人先天性心疾患専門医に相談することが必要です。妊娠中ばかりでなく、出産後の産褥期に心不全の増悪などを生じることもあり、出産後6ヶ月は十分に注意が必要です。また感染性心内膜炎の予防は常に必要になります。フォンタン手術が行われた患者さんでは、妊娠・出産は母親だけでなく胎児にも大きな危険を伴います。事前に心機能および全身臓器の検査を受け、その結果をもとに主治医ならびに成人先天性心疾患専門医に相談十分な相談を行なってください。

本疾患の関連資料・リンク

① 小児・成育循環器学(改訂第2版). 日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2024.
② 日本成人先天性心疾患学会ホームページ総合・連携認定施設一覧
https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/
③ 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/08/JCS2017_ichida_h.pdf
④ 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf
⑤ 心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版).
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/06/JCS2018_akagi_ikeda.pdf
⑥ 先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2022年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Ohuchi_Kawada.pdf

 

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上、円滑な移行医療、成人期以降の予後改善を目指した総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和6年11月(名簿更新:令和6年7月)