先天性三尖弁狭窄症(指定難病311)
せんてんせいさんせんべんきょうさくしょう
- たとえば肺動脈弁狭窄症では、肺動脈弁を手術やバルーンカテーテル治療で開いてあげれば、ほぼ健常な心臓になります。しかし、先天性の三尖弁狭窄症はそういうわけにはいきません。普通、三尖弁が全体的に小さく、右心室や肺動脈の低形成などいろいろな構造異常を伴っています。発症年令、三尖弁の大きさ、構造異常の程度などによって治療方法が大きく異なります。肺へ血液を送る役割をしている右心室は小さめのことが多く、痕跡的なことすらあります。多くの場合にはフォンタン型手術を目指すことになります。
先天性三尖弁狭窄症と言われました。三尖弁を開く手術をすれば治るのでしょうか?
- 正常な心臓には2つの心房と2つの心室がありますが、先天性三尖弁狭窄症で右心室が小さすぎる場合には、フォンタン手術が施行されます。フォンタン手術は根治手術ではありません。ただ、フォンタン型手術を終え術後経過が良好な患者さんでは、運動能力が良くなり、健康な人にかなり近い日常生活を送ることができるようになります。フォンタン型手術が普及したことによって患者さんの多くが成人に達し、正規の仕事に就き、軽めのスポーツを楽しんだりする機会が増えていることは事実です。一方で、フォンタン型手術後にはいろいろな問題が起こる可能性もあります。特に手術から10年、20年と年数が経つにつれて、心不全、不整脈、肝障害、血栓症などの合併症(フォンタン術後症候群)が出てくることがあります。しかし、薬物療法、カテーテル治療等の内科的治療は年々進歩し、心不全、不整脈、血栓症それぞれの分野で、新しい薬や治療法が開発されています。大切なことは、専門の外来を定期的に受診して診察や検査を受け、信頼のおける主治医の先生と十分相談し、心配なことがあるときは早期に対応していくことです。小児循環器外来のみでなく、最近は成人になった先天性心疾患患者さんのための専門の外来を開設している病院も増えています。そのような専門外来を受診することをお勧めします。(https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/)
フォンタン手術をすれば健康な人と同じになれるのでしょうか?
- どのような治療がされたか、現在の心臓の状態がどうかで、運動をどこまでやって良いかは全く異なります。無理なく参加できる自分にあった運動量を見いだしていくことが大切です。主治医とよく相談することです。さらに大切なことは、患者さん本人や学校の先生が、こんな症状が出て来たら休息を取るべきだという限度を知っておいて、その手前で運動を中止することです。具体的には、動悸、胸痛、頻脈、運動強度に見合わない呼吸促迫・呼吸困難、吐気、めまい・失神等です。必ず患者さん本人が必要に応じて休息をとれる環境を設定しておくようにします。適度な水分補給を行いながら運動することも大切です。経皮的酸素飽和度、血液検査、負荷心電図、心エコー、6分間歩行距離などの検査結果を総合して、どの程度の運動なら参加できるか、主治医とよく相談していくことが必要です。
中学校や高校で体育や運動部活動にはどのくらい参加していいですか?
- 機械弁やフォンタン手術後などでワルファリンを内服している場合、妊娠は基本的に禁止です。ただ、個人個人で状況は異なりますので、妊娠・出産の危険性については主治医の先生とよく相談して下さい。
妊娠、出産はできるのですか?
参考資料
①心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/06/JCS2018_akagi_ikeda.pdf
② 日本成人先天性心疾患学会ホームページ総合・連携認定施設一覧
https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/
研究班名 | 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上、円滑な移行医療、成人期以降の予後改善を目指した総合的研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和5年1月(名簿更新:令和6年7月) |