ハッチンソン・ギルフォード症候群(指定難病333)
1. 「ハッチンソン・ギルフォード症候群」とはどのような病気ですか
1886年にJonathan Hutchinsonと1897年にHasting Gilfordが報告したことから命名された疾患です。遺伝性早老症の中でも特に症状が重い疾患で、動脈硬化による脳や心臓の 重篤 な血管障害が10歳台で起こることが多く、平均寿命は14.6歳と報告されています。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
きわめて稀な疾患で、国内で約10例、全世界で350~400人の患者さんが報告されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
出生後から痩せ気味で皮下脂肪が少なく皮膚が厚く光沢があり、身長体重の伸びが著しく悪く、また髪の毛も少なく四肢の関節が少し曲がった状態で十分伸びないのが特徴とされています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
多くの患者さんは、LMNA遺伝子内の点突然 変異 c.1824C>T (p.Gly608Gly)によりプロジェリンと呼ばれる異常物質が産生されます。典型的な臨床表現型の患者さんの約9割がこの遺伝子の変異を保有しています。患者さんでは、加齢とともにプロジェリンが全身の細胞にたまってきて老化を引き起こすと考えられています。またZMPSTE24遺伝子の変異による下顎末端異形成症もプロジェリンに似たプレラミンAが過剰となり同様の早老症様症状を認めます。
5. この病気は遺伝するのですか
典型に分類されるほとんどの患者さんはLMNA遺伝子の突然変異が原因のため通常は遺伝しません。LMNA遺伝子の変異が原因でラミノパチーに分類される疾患やZMPSTE24遺伝子の変異では、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)や常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の遺伝形式をとる疾患もあります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
正常新生児として出生しますが、乳児期早期から皮膚が硬く光沢を帯びた感じに変化し、身長体重の伸びの著しい低下が現れてきます。乳幼児期から脱毛、前額突出、小顎等の早老様顔貌、皮膚の萎縮や硬化と関節拘縮(硬くて動きが悪くなること)が観察されるようになります。また、動脈硬化性疾患による重篤な脳血管障害や心血管疾患は加齢とともに顕在化し 生命予後 を規定する重要な合併症です。悪性腫瘍は10歳前後から起こる合併症として重要です。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
現時点では確立した治療法はありません。それぞれの症状に対する対症療法が主となりますが、米国では昨年2020年11月ファルネシル転移 酵素阻害薬 のロナファニブが米国食品医薬品局(FDA)に医薬品として承認されました。ロナファニブ内服治療により、約2年間の観察期間で有意な死亡率の低下を認めたと報告されています。現在この薬剤の国内承認に向けて、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で協議が始まっています。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
典型に分類される患者さんは10歳代でほぼ全例が亡くなってしまうと報告されています。一方で、非典型の患者さんでは40歳以上の長期生存例も報告されていますが、動脈硬化性の血管障害に加え,がんの発生(特に多重がん)に留意する必要があります。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
それぞれの症状に合わせた社会的サポートを受けて頂くことが大切です。また定期的な検査と予防療法が大切です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
11. この病気に関する資料・関連リンク
NPO法人のProgeria Research Foundationが英語のホームページで詳細な情報・資料を公開しています (https://www.progeriaresearch.org/) 。また2020年12月に日本語ホームページを開設しました (http://square.umin.ac.jp/hgps/index.html) 。
研究班名 | 早老症の医療水準向上と予後改善を目指す集学的研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和5年12月(名簿更新:令和6年6月) |