家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(指定難病79)
1. 「家族性高コレステロール血症ホモ接合体」とはどのような病気ですか
「家族性高コレステロール血症」は、生まれつき血液中のLDL(Low-density lipoprotein)コレステロールが著しく増えてしまう病気です。血中のLDLコレステロール値は高ければ高いほど動脈硬化が進行するので悪玉コレステロールと呼ばれています。通常、血中のLDLは、LDL受容体と呼ばれるタンパク質を介して肝臓に取り込まれます。家族性高コレステロール血症は、LDL受容体または関連するタンパク質の遺伝子に変異があり、血中のLDLが肝臓に回収されず、血中に溜まってしまう病気です。私たちの遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL受容体やその働きに関わる遺伝子変異が両方に認められる場合を「ホモ接合体」とよび、いずれか一方のみに変異が認められる場合を「ヘテロ接合体」とよびます。家族性高コレステロール血症ホモ接合体の患者さんは、生まれつき血清総コレステロール値が450mg/dL以上(健常人は120~220mg/dL)、LDLコレステロールが370mg/dL以上と非常に高くなります。このため適切に治療が行われないと、幼い頃から動脈硬化が進行して、小児期から心筋梗塞などの命に関わる病気を発症します。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
100万人に1人、日本においては120人程度とされていましたが、この病気に関わる新しい遺伝子が見つかってきており、ヘテロ接合体が300人に1人であることから、日本ではホモ接合体は340人程度と考えられています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、父親と母親の両方に高LDLコレステロール血症がある人に多いです。
4. この病気の原因はわかっているのですか
LDLを肝臓に回収するLDL受容体やそれに関わる遺伝子に変異があり、LDLが肝臓に取り込まれないため血液中に長時間残ってしまい、動脈硬化を引き起こすことがわかっています。家族性高コレステロール血症ホモ接合体はLDLが肝臓にほとんど取りこまれない病気で、ヘテロ接合体はLDLの肝臓への取り込みが健常人の半分程度になっている病気です。
5. この病気は遺伝するのですか
家族性高コレステロール血症は、LDL受容体遺伝子やその働きに関わる遺伝子の変異によるものであり、遺伝します。両親がともに家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体の場合、1/4の確率でホモ接合体のお子さんが生まれます。両親のいずれか片方がヘテロ接合体である場合、1/2の確率でヘテロ接合体が生まれます。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、10歳までに肘や膝などの皮膚に黄色腫と呼ばれる黄色いいぼ状の塊が見られることが多いです。成長とともに大きく盛り上がった黄色腫(結節性黄色腫といいます)が認められるようになります。これは肘や膝、手首、おしり、アキレス腱、手の甲などに多く認められます。大動脈弁上部や冠動脈に動脈硬化が進行すると、階段を上がるなど身体を動かすと胸が痛い、息苦しい、という症状がでることがあります。ホモ接合体は治療しないで放置すると、非常に若い時に狭心症や心筋梗塞を発症し、突然死することもあります。ヘテロ接合体ではアキレス腱などの腱黄色腫や皮膚黄色腫が見られることがありますが、これらの症状は10歳以後におきることが多いです。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
食事療法(低脂肪・低コレステロール食)に加えて、スタチンをはじめ、エゼチミブ、レジン、プロブコールなどの脂質低下薬により、治療をします。ホモ接合体では、多くの場合これらの薬剤では効果が十分ではないため、注射薬の抗PCSK9モノクローナル抗体(エボロクマブ)、PCSK9 siRNA製剤(インクリシラン)、ホモ接合体のみに使用できるANGPTL3阻害薬(エビナクマブ)、MTP阻害薬(ロミタピド)を使用します。それでも効果が足りない場合には、LDLアフェレシスという治療法があります。LDLアフェレシスは、体外循環を用いて悪玉コレステロールであるLDLを取り除くことができる治療法です。これは、腎不全の患者さんに行う人工透析装置に似た医療機器を用いて、血液からLDLを直接除去する方法です。1~2週間に1回の頻度で、一生続ける必要があります。ベッド上で治療の時間中、安静にできるようになる4歳~5歳には、治療を始めることが望ましいです。治療の開始が遅れれば遅れるほど動脈硬化は進行してしまいますので、診断、治療を速やかに行う必要があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
小児期に皮膚黄色腫で気づかれ、血液検査で著しい高LDLコレステロール血症がわかり、診断されます。薬剤で十分なLDLコレステロール値の低下効果が得られない場合には、すぐにLDLアフェレシス治療を開始し、適切な間隔で持続できれば、動脈硬化の進行を遅くすることができます。LDLアフェレシスなどの適切な治療を行わない場合、予後は極めて不良です。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
脂肪やコレステロールの少ない食事を摂り、生涯喫煙しないこと(またはすぐに禁煙)、軽い有酸素運動を行うことが重要です。運動については医師の診断を受けて、行って良いという範囲内で行ってください。また、内服薬の調整やLDLアフェレシスの施行は専門医のもとで継続することが重要です。必要に応じて頸動脈エコーやトレッドミル、心エコー、腹部エコー、CT、造影検査など、動脈硬化の診断についても専門医のもとで定期的に行うことが重要です。糖尿病、高血圧、肥満などの動脈硬化危険因子については、厳格にコントロールすることが必要です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。