PURA関連神経発達異常症(指定難病343)

ぴーゆーあーるえーかんれんしんけいはったついじょうしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
5q.31.3領域にあるPURA遺伝子のヘテロ接合性の病原性変異を原因とする重度の知的及び運動発達の遅れを特徴とする先天異常症候群である。他に筋緊張低下、低体温、傾眠、摂食障害、吃逆過多、無呼吸やてんかん、非てんかん性の異常運動(ジストニアなど)、視覚障害を認める。PURA遺伝子は全身の細胞でDNAの複製の調節に関与しており、特に中枢神経の正常発達に不可欠と考えられている。ほかに、先天性心疾患、尿路奇形、骨格異常、内分泌異常などを合併することもある。多臓器にわたる症状は小児期以降も軽快せず、成人期以降も持続する。
 
2.原因
5q.31.3領域にあるPURA遺伝子のヘテロ接合性の病的バリアントないしは同領域の染色体微細欠失を原因とする。
 
3.症状
重度の精神発達遅滞、筋緊張低下、てんかんを認める。眼振や斜視、無呼吸発作・低換気、先天性心疾患、哺乳不良・摂食障害、嚥下障害、胃食道逆流、便秘など。骨格では、側弯や股関節脱臼などを認める。
 
4.治療法
対症療法が中心となる。早期からのリハビリテーションや療育の参加は重要。摂食障害や哺乳障害などには経管栄養も考慮する。また、逆流や誤嚥性肺炎などを繰り返す場合には胃ろう造設も考慮する。てんかんに対しては抗てんかん薬を用いる。無呼吸や換気障害では、呼吸モニターを行う。
 
5.予後
合併するてんかんなどの神経症状及び無呼吸発作や低換気などの呼吸障害、気道感染などが予後を左右する。成人期以降は、栄養管理や関節拘縮、側弯の進行、てんかん発作の変化、気道感染に注意する。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
約100人
2.発病の機構
不明(PURA遺伝子の機能喪失変異ないしはハプロ不全が原因であるが、その発症病態は不明である。)
3.効果的な治療方法
未確立(各症状の対症療法のみ。)
4.長期の療養
必要(多臓器にわたる症状は小児期以降も軽快せず、成人期以降も持続する。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
精神保健福祉手帳診断書における「G40 てんかん」の障害等級判定区分、及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。


「G40てんかん」の障害等級(※1)

能力障害評価(※2)

1級程度の場合

1~5全て

2級程度の場合

3~5のみ

3級程度の場合

4~5のみ




○ 情報提供元
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天異常症候群のライフステージ全体の自然歴と合併症の把握:Reverse phenotypingを包含したアプローチ」
研究代表者 慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 教授 小崎健次郎
 
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「稀少てんかんの診療指針と包括医療の研究」
研究代表者 NHO 静岡てんかん・神経医療センター 院長 今井克美


<診断基準>
 Definiteを対象とする。

A.症状
(主項目)
1.筋緊張低下
2.重度精神運動発達遅滞
3.摂食障害・胃食道逆流

(副項目)
4.嗜眠傾向
5.低体温
6.痙攣発作
7.新生児期低換気

B.遺伝学的検査
PURA遺伝子の病原性変異

C.鑑別診断
下記の疾患を鑑別する。
先天性中枢性低換気症候群、プラダー・ウィリ症候群、下肢優位常染色体顕性脊髄性筋萎縮症Ⅰ型(OMIM 158600)/遠位性常染色体潜性脊髄性筋萎縮症Ⅰ型(OMIM 604320)、新生児期の筋強直性ジストロフィー、神経伝達物質病、レット症候群、ピット・ホプキンス症候群、アンジェルマン症候群

<診断のカテゴリー>
Definite:Aの(主項目)の3項目全てを満たし、かつBを満たし、かつCの鑑別すべき疾患を除外する
Probable:Aの(主項目)の3項目全てかつ(副項目)のうち2項目以上を満たし、かつCの鑑別すべき疾患を除外する
 
<参考事項>
・常染色体顕性、PURA遺伝子の一部もしくは全てを含む5q31.3領域の非反復性欠失(10%)、de novo突然変異であるが、罹患者の両親は生殖細胞モザイクの可能性(経験的には1%未満と推定)がある。
 
<重症度分類>
精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。


「G40てんかん」の障害等級

能力障害評価

1級程度の場合

1~5全て

2級程度の場合

3~5のみ

3級程度の場合

4~5のみ


精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分


てんかん発作のタイプと頻度

等級

ハ、ニの発作が月に1回以上ある場合

1級程度

イ、ロの発作が月に1回以上ある場合
ハ、ニの発作が年に2回以上ある場合

2級程度

イ、ロの発作が月に1回未満の場合
ハ、ニの発作が年に2回未満の場合

3級程度


「てんかん発作のタイプ」
イ 意識障害はないが、随意運動が失われる発作
ロ 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
ハ 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
ニ 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

精神症状・能力障害二軸評価 (2)能力障害評価
○判定に当たっては以下のことを考慮する。
①日常生活あるいは社会生活において必要な「支援」とは助言、指導、介助などをいう。
②保護的な環境(例えば入院・施設入所しているような状態)でなく、例えばアパート等で単身生活を行った場合を想定して、その場合の生活能力の障害の状態を判定する。


精神障害や知的障害を認めないか、又は、精神障害、知的障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通に出来る。
○適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺 の安全保持や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用、趣味や娯楽あるいは文化的社会的活動への参加などが自発的に出来る、あるいは適切に出来る。
○精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることが出来る。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。
○「1」に記載のことが自発的あるいはおおむね出来るが、一部支援を必要とする場合がある。
○例えば、一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。
○デイケアや就労継続支援事業などに参加するもの、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる。日常的な家事をこなすことは出来るが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切に出来ないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむね出来る。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に著しい制限を受けており、時に応じて支援 を必要とする。
○「1」に記載のことがおおむね出来るが、支援を必要とする場合が多い。
○例えば、付き添われなくても自ら外出できるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。医療機関等に行くなどの習慣化された外出はできる。また、デイケアや就労継続支援事業などに参加することができる。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。清潔保持が自発的かつ適切にはできない。社会的な対人交流は乏しいが引きこもりは顕著ではない。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。

精神障害、知的障害を認め、日常生活又は社会生活に著しい制限を受けており、常時支援を要する。
○「1」に記載のことは常時支援がなければ出来ない。
○例えば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである、自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。

精神障害、知的障害を認め、身の回りのことはほとんど出来ない。
○「1」に記載のことは支援があってもほとんど出来ない。
○入院・入所施設等患者においては、院内・施設内等の生活に常時支援を必要とする。在宅患者においては、医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時支援を必要とする。

 

※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。


令和7年4月1日


  1. Kofoed AWS, Kristiansen SS, Miranda MJ, Rubboli G, Johannesen KM. Differences in manifestations of epilepsy and developmental delay in PURA syndrome and 5q31 microdeletions. Clin Genet. 2024;106:386-93.
  2. Falsaperla R, Sortino V, Schinocca MA, Fusto G, Rizzo R, Barberi C, et al. PURA-Related Neurodevelopmental Disorders with Epilepsy Treated with Ketogenic Diet: A Case-Based Review. Genes (Basel). 2024;15.
  3. Mroczek M, Iyadurai S. Neuromuscular and Neuromuscular Junction Manifestations of the PURA-NDD: A Systematic Review of the Reported Symptoms and Potential Treatment Options. Int J Mol Sci. 2023;24.
  4. Johannesen KM, Gardella E, Gjerulfsen CE, Bayat A, Rouhl RPW, Reijnders M, et al. PURA-Related Developmental and Epileptic Encephalopathy: Phenotypic and Genotypic Spectrum. Neurol Genet. 2021;7:e613.
  5. Reijnders MRF, Leventer RJ, Lee BH, Baralle D, Selber P, Paciorkowski AR, et al. PURA-Related Neurodevelopmental Disorders. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, editors. GeneReviews® [Internet] Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-20242017.
情報提供者
研究班名 稀少てんかんの診療指針と包括医療班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和7年4月(名簿更新:令和6年6月)