極長鎖アシル-CoA 脱水素酵素欠損症(指定難病344)
1.この病気(VLCAD欠損症)とはどのような病気ですか?
VLCAD欠損症は、体がエネルギーを作るために脂肪を使う際に必要な「酵素」がうまく働かない病気です。この酵素は「長鎖脂肪酸」と呼ばれる脂肪をエネルギーに変える過程で重要な役割を果たしていますが、酵素の働きが不足していると、体が十分なエネルギーを作れなくなります。そのため、空腹や病気、激しい運動といった特定の状況で体調を崩しやすくなります。発症時期や症状の重さは人それぞれで、赤ちゃんの時期に重篤な低血糖やや心不全で発症することもあれば、小児期に低血糖や肝機能障害で発症する場合、それ以降の成人期までも含めて筋肉痛や筋力低下、運動後などに筋肉が壊れる「横紋筋融解症(筋肉痛や脱力感を伴う症状)」として現れることもあります。
近年は、新生児マススクリーニングという検査で赤ちゃんの時期に見つけられることが増えていますが、成人の患者さんはこの検査を受けていない方が多いです。診断後は、適切な治療を受けることで、症状を起こりにくくする、軽減することが可能です。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
日本における新生児マススクリーニングでの発見率は約10万人に1人程度とされており、非常にまれな疾患です。
3. この病気はどのような人に多いのですか?
この病気は特にどのような人に多いというのはありません。ただし、両親が近親婚の場合や同じ病気の患者が家族にいる場合にはリスクが高くなります。また、兄弟(姉妹)に本症の方がいる場合は⑤で説明するように1/4の確率で他の兄弟(姉妹)も病気である可能性があります。
4. この病気の原因はわかっているのですか?
この病気は、ACADVLという遺伝子の生まれつきの変化が原因です。この遺伝子はVLCAD酵素をつくる指示を出しますが、ここに生まれつき変化がある事によりその機能が様々な範囲で失われます。
5. この病気は遺伝するのですか?
はい、この病気は遺伝性の病気です。体の中にはそれぞれの遺伝子が2つ(1つは父、もう1つは母から受け継ぎます)あります。この病気はACADVLという遺伝子の両方に生まれつきの問題がある場合に発症します。1つだけに問題がある人は「保因者」と呼ばれ、健康で病気の症状は出ません。ただし、保因者同士の間に生まれるお子さんは、4回に1回の確率でこの病気を発症する可能性があります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか?
発症する時期や病型により異なります。
新生児期発症型: 出生後早期から症状が出現し、意識障害やけいれん、呼吸障害、心不全、著しい低血糖などが見られ、救命が困難な場合も少なくない重症型です。
乳幼児期発症型: 発熱や嘔吐時,食事間隔が空いた時などに低血糖、筋力低下、肝機能障害、高アンモニア血症などを引き起こします。低血糖の程度はしばしば重度であり、けいれんや乳幼児突然死をきたすこともあります。診断後も感染などに伴って筋症状を繰り返す事が多くなります。発作の後遺症として発達障害をきたすことも多いです。診断後も感染などに伴って筋症状を繰り返す事が多い病型で、発作の後遺症として発達のおくれ等をきたすこともあります。
遅発型: 骨格筋型ともいわれる病型で、小児期から成人期にかけて発症し、運動や飢餓などが誘因となり、横紋筋融解症や筋肉痛、筋力低下が生じます。
7. この病気にはどのような治療法がありますか?
根本的な治療法はありませんが、症状を管理することで発作を予防します。例えば、食事療法では空腹を避ける食事間隔を守ることや 中鎖脂肪酸(MCTオイル)の使用が推奨されます。年齢があがるにつれて筋肉の症状が強くなるため、運動の質や量を制限する必要がでてくることも多いです。発熱や感染症などのストレスがある場合は、入院して適切なケアを受けることが必要です。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか?
発症する時期やその時の症状などによりますが、新生児期発症型では救命が難しい場合もあります。乳幼児期発症型では低血糖などの急性発作が起きてしまうと生命の危険や後遺症が残る可能性があるので、発作を予防する事が非常に重要です。学童期以降に発症する患者さんでは筋肉の症状が中心となることが一般的です。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?
VLCAD欠損症の方は、日常生活でのエネルギー不足を防ぐことが重要です。特に、長時間の空腹を避けるために、こまめに食事や軽食を摂ることを心がけましょう。また、脂肪をエネルギーに変える機能が弱いため、過度に脂肪分が多い食事は控え、糖質が多めな食事が良いでしょう。VLCAD欠損症の患者さんは、中鎖脂肪酸(MCTオイルや小児期ではMCTミルク)をエネルギーとして利用する事は出来るので、治療として使用される事が多いです。激しい運動や長時間の立ち仕事なども、筋肉へのダメージ(横紋筋融解症)を引き起こす可能性があがるので避けるべきでしょう。風邪や胃腸炎などのときは、代謝が乱れやすく、症状が悪化する可能性が高まります。早めに医療機関を受診してブドウ糖などの点滴を十分に受けることが重要です。日々の生活では規則正しい食事と適度な休養を心がけ、必要であれば主治医や栄養士と相談しましょう。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
長鎖脂肪酸代謝異常症:VLCAD欠損症を含む複数の脂肪酸代謝異常症を含めた呼び方です。
11. この病気に関する資料・関連リンク
日本先天代謝異常学会/新生児マススクリーニング対象疾患診療等ガイドライン2019:
https://jsimd.net/pdf/newborn-mass-screening-disease-practice-guideline2019.pdf
研究班名 | 新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の成人期にいたる診療体制構築と提供に関する研究班 研究班名簿 研究班ホームページ |
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情報更新日 | 令和7年4月(名簿更新:令和6年6月) |