原発性肝外門脈閉塞症(指定難病346)
1.「原発性肝外門脈閉塞症」とはどのような病気ですか?
門脈(小腸からの栄養分を多く含む肝臓に流入する血管)の一部が閉塞することにより門脈の圧が上昇し、食道胃静脈瘤・十二指腸静脈瘤の発生や、脾臓の腫大、貧血等の症状を呈する疾患のことです。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
有病者数は610~930人程度であり、本邦においては人口100万人当たり6.1人の 有病率 であろうと推定されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか?
男性にやや多く、男女比は1.25:1です。平均発症年齢は10歳未満が一番多く約半数を占めます。
4. この病気の原因はわかっているのですか?
血管形成異常、血液凝固異常、骨髄増殖性疾患の関与が考えられておりますが、はっきりした原因は分かっていません。
5. この病気は遺伝するのですか?
原則として遺伝しないものとされています。しかし、骨髄増殖性疾患に関しては遺伝子変異の有無が注目されているため、一部の患者さんでは先天的な素因の関与が疑われており、この点に関しては現在研究の途上です。
6. この病気ではどのような症状がおきますか?
門脈閉塞に伴い門脈圧が上昇すると、脾臓が大きくなり腹水が貯まります。さらに、門脈圧の上昇により門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の臓器に逃げるようになります。このようにしてできた新しい血液の流通経路を 側副血行路 と言います。この側副血行路のために腹壁の静脈が怒張し、食道、胃、十二指腸などの消化管に静脈瘤ができます。脾臓が大きくなると脾機能亢進という状態になり、貧血をきたすようになります。また血小板も少なくなり、出血した時に血液が止まりにくくなります。さらに、静脈瘤の圧が上昇すると、静脈の血管がその圧に耐えきれなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血等の症状が出ます。出血のためショックになり死亡することもあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか?
門脈圧亢進症にともなう消化管静脈瘤と、脾機能亢進症にともなう貧血(汎血球減少症:赤血球、白血球、血小板の全てが減少してきます)が治療の対象となります。
静脈瘤が出血した際には緊急の処置が必要です。放置すると出血のためショックとなり、場合によっては生命が危険にさらされる可能性があります。このような場合は直ちに最寄りの救急病院を受診し、点滴・輸血などの救急処置をした上で、静脈瘤からの出血に対して内視鏡などを使った出血処置を受けなければなりません。
静脈瘤に対する止血処置
・薬物療法
・バルーンタンポナーデ法
・内視鏡的治療:硬化療法、結紮術、組織接着剤注入術
・バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術
・手術療法:食道離断術、Hassab手術
脾機能亢進症に対する治療
・血球減少が高度の際には部分的脾動脈塞栓術や脾摘術を考慮します。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか?
3~7年生存率は90~98%、10年生存率は69~86%と報告されており、消化管静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば経過は比較的良好です。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?
肝障害を生じますので禁酒が基本となります。静脈瘤が生じている場合は、出血しないような柔らかい食事が望ましいです。また、門脈閉塞が悪化しないよう抗凝固剤の内服を勧められることもあります。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
該当する病名はありません。
11. この病気に関する資料・関連リンク
ガイドライン:門脈血行異常症ガイドライン 2018 年改訂版(2018年12月13日Version)
http://www.hepatobiliary.jp/uploads/files/%E5%AE%8C%E6%88%90%E3%80%80%E9%96%80%E8%84%88%E8%A1%80%E8%A1%8C%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%A4%A7%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88.pdf