皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)(指定難病124)

ひしつかこうそくとはくしつのうしょうをともなうじょうせんしょくたいゆうせいのうどうみゃくしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

英文名:CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)

1. 「CADASIL」とはどのような病気ですか

遺伝性の疾患で、主に脳の細い血管が障害されることにより、症状が起こります。脳 梗塞 や脳出血を繰り返すことによって体が動きにくくなったり、血管性認知症になります。また多くの患者さんは頭部MRI画像で白質病変と言われる異常所見が認められます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

これまで、日本国内には1200人ほどの患者さんが存在すると推定されていました。しかし、近年の遺伝学的研究から、数万人以上の患者さんが存在する可能性が指摘されるようになりました。

3. この病気はどのような人に多いのですか

常染色体顕性遺伝(優性遺伝) 性疾患(親から子へ50%の確率で伝わる)ですので、家系内に同じ病気の方がいれば発症する可能性があります。家系内に病気がはっきりとしない場合もあります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

NOTCH3という遺伝子の変異が見つかっています。NOTCH3は胎児が成長するときに主に働く遺伝子ですが、成人では主に血管に認められて、血管壁の正常な機能を保つ役割を果たしています。
NOTCH3遺伝子変異からCADASILの病気が生じる 機序 に関してはよく分かっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝歴がはっきりとしない場合もありますが、 顕性遺伝(優性遺伝)性 (親から子へ50%の確率で伝わる)ことが多いです。脳梗塞を起こしやすい疾患(高血圧、糖尿病、高脂血症など)を全く合併しない場合もあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

まず若年から中年期に約半数の患者さんで片頭痛を認めます。片頭痛とは頭の片側もしくは両側でズキンズキンと波打つような頭痛が4~72時間ほど続く頭痛です。痛みのピーク時にはあまりの痛みで仕事や家事ができないことも多く、嘔吐や吐き気を伴うこともあります。時に目の前がチカチカ光ったりぎざぎざした光が見えたり視野の一部が見えにくくなる閃輝暗点という視覚前兆を伴うこともあります。
次に、壮年期から中年期以降にかけて脳梗塞を発症することがあります。脳梗塞は、脳の血管が細くなったり、血管が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける病気です。脳梗塞は詰まる血管の太さやその詰まり方によってさまざまなタイプがありますが、CADASILでは特に、脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞という脳梗塞を発症することが多いです。脳梗塞を発症すると歩きにくい、しゃべりにくい、手が動かしにくいなどの症状が出ます。脳梗塞が再発すると歩きにくさやしゃべりにくさがさらに悪化することがあります。また、日本では、脳梗塞よりも、脳出血が目立つタイプが存在することも分かってきました。
さらに、脳梗塞や脳出血の再発を繰り返すと抑うつ症状が出現することもあり、気分が落ち込む、眠れない、食欲がなく食べない、感情が鈍くなっている、何に対しても興味を示さないなどの症状が現れる事があります。同様に脳梗塞や脳出血の再発により、ものが覚えられない、考えるスピードが落ちる、注意力が落ちるなどの認知症症状(とくに血管性認知症、皮質下性認知症)が現れることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

根本的な治療はまだありません。現在、新しい治療法に関する臨床試験が実施されています。詳細は、担当医もしくは本研究班へお問い合わせください。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

脳梗塞の発症年令、重症度、症状の進行速度にはかなり個人差があります。脳梗塞再発を繰り返すと徐々に動きにくくなり歩きにくくなるという症状が進行します。また血管性認知症を発症することがあります。
数年間、脳梗塞再発を防げると症状が悪化しない場合もあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

一般的な脳梗塞に対する注意事項(高血圧、糖尿病、脂質異常症などに対する治療、禁煙、過度の飲酒を止める)に留意してください。脳梗塞の後遺症がある場合は、体操やリハビリテーションなどで運動機能を保つことが重要です。転倒や骨折を防ぐこと、 嚥下障害 による誤嚥性肺炎を防ぐことなども重要です。
また、急に動きにくい、しゃべりにくいなどの症状が生じた場合には脳梗塞再発の可能性がありますので病院への受診が必要です。 

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

英文名:CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)

11.本疾患の関連リンク

CADASIL研究班ホームページ

情報提供者
研究班名 成人発症白質脳症の実態調査とレジストリ作成の研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和6年10月(名簿更新:令和6年6月)