複合カルボキシラーゼ欠損症(指定難病255)

ふくごうかるぼきしらーぜけっそんしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「複合カルボキシラーゼ欠損症」とはどのような病気ですか

ビオチンというビタミンを結合して機能する4種類の 酵素 が、ビオチンが酵素に結合することができずに酵素活性が障害されて起こる疾患です。その4種類の酵素とはプロピオニル CoA カルボキシラーゼ(PCC)、メチルクロトニル CoA カルボキシラーゼ(MCC)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)、アセチルCoA カルボキシラーゼ(ACC)です。複合カルボキシラーゼ欠損症にはホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症とビオチニダーゼ欠損症の2つが含まれます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

海外では6万人に1名という頻度で報告されていますが、日本での発症頻度は100万人に1人という報告があり稀な先天代謝異常症です。

3. この病気はどのような人に多いのですか

日本人は欧米人にくらべて頻度は非常に低いです。

4. この病気の原因はわかっているのですか

ホロカルボキシラーゼ合成酵素遺伝子HLCSもしくはビオチニダーゼ遺伝子BTDの変異によっておきます。

5. この病気は遺伝するのですか

はい。この疾患はどちらも 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) 形式をとる先天代謝異常症です。一般には患者さんのご両親はこの疾患には罹っていませんが、 保因者 といって1対の遺伝情報の一方に変異があります。
そのため次のお子さんが同じ病気となる可能性は1/4となります。ただし突然変異等で発症する可能性もあり、正確な状況を把握するには両親の遺伝子検査が必要となります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症では、一般に新生児期〜乳児期早期という早い時期につらくてミルクが飲めない、呼吸が速い、ぐったりする、けいれんするなどの症状で発症し、やがて頑固な湿疹、けいれん、発達の遅れをきたします。ビオチニダーゼ欠損症では、乳児期以降に筋の緊張が弱い、頑固な湿疹をきたします。
現在は 新生児マススクリーニング の対象疾患となっており、検査の結果全く無症状のうちに診断されることが増えると思われます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

この疾患と診断がつけば大量のビオチンを飲むことによって治療を行います。必要量は個人によって違うとされおり、担当の先生にしっかり見て頂くことが重要です。そのほかにL-カルニチンを飲むこともあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

ビオチン投与に反応すれば臨床症状はなくなると言われていますが、中には反応が十分でない方も見られるようです。最初に強い代謝不全があった場合、改善しても発達の遅れをきたすことがあります。またビオチニダーゼ欠損症では難聴、視神経萎縮がビオチン投与でも改善しないという報告があります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

ビオチンをしっかり飲むことが重要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症
ビオチニダーゼ欠損症
マルチプルカルボキシラーゼ欠損症

 

情報提供者
研究班名 新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の成人期にいたる診療体制構築と提供に関する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和6年6月)