カナバン病(指定難病307)

かなばんびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「カナバン病」とはどのような病気ですか?

1931年にCanavan博士により初めて報告された稀な遺伝病です。患者さんの多くは精神・運動発達の遅れがあり、頭囲が大きく、視神経の萎縮により視力に問題が生じ、徐々に神経症状が進行していきます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

カナバン病は、アシュケナージユダヤ人に多く発症が報告されていますが、日本ではほとんど患者さんの報告はありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか?

発症の時期により、生後1週間以内に発症する先天型、生後2−6ヶ月で発症する乳児型、4-5歳で発症する若年型の3つのタイプがありますが、多くは乳児型です。

4. この病気の原因はわかっているのですか?

先天的なASPA遺伝子 変異 が原因で、生体内の代謝に必要な 酵素 が働かなくなり、中枢神経にN-acetylasparitic acid(NAA)という物質が蓄積することにより神経症状をきたします。

5. この病気は遺伝するのですか?

常染色体潜性(劣性)遺伝という遺伝形式をとる遺伝病ですが、患者さんの両親は通常、疾患保因者で同じ病気ではありません。両親が保因者であれば、患者さんの同胞は25%で同じ疾患を発症する確率になります。患者さんの次の世代には通常は遺伝しません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか?

最も一般的な乳児型では、生後間もなくから筋肉の緊張が柔らかく、定頸から運動発達が遅れます。徐々に頭囲の拡大が明らかになり、視覚的な反応の悪さがみられます。さらに症状が進行するとけいれん発作が起きたり、体が硬くなったりします。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

現時点では症状を治す治療法はありません。対症療法や栄養補給が主体となります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか?

病気自体が進行性であるため、しだいに運動症状が悪化し、寝たきりになります。食事の飲み込みも徐々にできなくなって、 胃瘻 や栄養チューブからの栄養が必要になります。視力の低下により、視覚的な反応が悪くなります。若年型では20歳を超えて生存することもありますが、多くの例では思春期までに死亡するとされています。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

運動機能が進行性に悪化するため、特に咽喉頭の機能不全による誤嚥性肺炎に注意が必要です。てんかん発作がある場合には、抗けいれん薬の治療を行い、服薬指示を守るようにしましょう

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

 

情報提供者
研究班名 遺伝性白質疾患・知的障害をきたす疾患の医療水準の向上と療養に資する研究システムの構築班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月)